後継者に安心して引き継ぐために|事業を「磨き上げる」実践ガイド

2025年5月14日 管理人

後継者に安心して引き継ぐために|事業を「磨き上げる」実践ガイド

―事業承継ステップ3:経営改善で未来への基盤を整える―


はじめに|“見える化”の次は「磨き上げ」

事業承継におけるステップ2で、自社の経営状況や課題が明確になったら、次は「ステップ3」=磨き上げ(経営改善)です。

このステップは、後継者が安心してバトンを受け取るための経営状態の強化を目的とします。強みをさらに伸ばし、弱点を補い、しなやかで持続可能な経営体制を整えることが求められます。


第1章|本業の競争力を強化する

✔ 自社の「強み」を伸ばし、「弱み」を改善する

  • 人気商品やシェアの高いサービスの強化

  • 技術や品質の向上

  • 人材の育成・採用による組織力強化

  • 取引先や業種の偏りを見直し、リスクを分散

✔ 活用できる制度:「経営力向上計画」

「中小企業等経営強化法」に基づく経営力向上計画は、税制優遇や金融支援が受けられる制度です。競争力の強化に役立つだけでなく、後継者の育成にも有効です。

✔ ベンチャー型事業承継という選択肢も

後継者が新しい事業に挑戦したり、既存事業を再構築したりする「ベンチャー型事業承継」の事例も増えています。若い感性や発想を生かすことで、大胆な経営革新が実現されることもあります。


第2章|経営体制の総点検と社内整備

✔ 引き継ぎやすい「仕組み」を整える

後継者がスムーズに事業を運営できるよう、以下のような体制整備が必要です。

  • 役職や権限の明確化と段階的な委譲

  • 各種業務マニュアル・社内規程の整備

  • コミュニケーションの活性化による社内の風通し改善

  • モチベーション向上施策の導入(面談制度・報酬設計など)

✔ 経営資源のスリム化

  • 不要な資産や滞留在庫の整理・処分

  • 過剰負債や遊休資産の圧縮

  • キャッシュフローを意識した資金運用の見直し

これらは、後継者が「継ぎたい」と思える事業環境をつくるために不可欠な取組です。


第3章|財務体質の強化と再生への対応

✔ 経営の信頼性を高める財務改善

  • 月次での正確な試算表の作成

  • キャッシュフロー管理の徹底

  • 財務指標(自己資本比率、流動比率など)の改善

財務基盤を整えることで、金融機関や取引先からの信頼も高まり、資金調達の可能性が広がります。

✔ 事業再生も選択肢のひとつ

業績が悪化している場合や過剰債務を抱える場合は、早期の事業再生が重要です。

  • 事業の選択と集中による収益改善

  • 不採算部門の撤退や見直し

  • 必要に応じた法的整理・私的整理

事業再生には、弁護士・税理士・中小企業診断士など専門家の関与が不可欠です。承継の前にしっかりと“経営の土台”を立て直すことが、後継者の不安を払拭する第一歩です。


第4章|「磨き上げ」は専門家と一緒に進める

事業の磨き上げは、財務・人事・組織・法務など、多方面にわたるため、士業や支援機関のアドバイスを受けながら進めるのが効率的です。

✔ 相談先の例

  • 税理士(経営分析、資産整理、株価対策)

  • 中小企業診断士(事業改善、新規事業支援)


まとめ|後継者に“引き継ぎたくなる”会社に

事業承継は、会社の将来を見据えた大切な経営課題です。そして、後継者に「この会社を引き継ぎたい」と思ってもらえる状態にしておくことが、現経営者の最終的な責任です。

取組分野内容
本業強化強みの深化、新たな挑戦、若手の感性活用
経営体制社内制度の整備、権限委譲、資産整理
財務強化月次管理、信用力向上、資金調達力強化
再生対応赤字・債務の解消、法的・私的再生の検討

こうした取り組みは、承継後の企業の持続性と成長可能性を大きく高めてくれます。事業承継は“終わり”ではなく、“第二の創業”です。磨き上げの努力が、次の時代を担う経営者の希望となるはずです。

相続税の専門院

お問合せ

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

, , , ,