法人税

法人税に関するコラム(blog)です。

27 5月 2025

役員による使い込みに関する税金

目次 1 横領損失と損害賠償請求権は同時に計上されるのが原則 2 損害賠償を途中で免除した場合のリスク 3 過年度にわたる使い込みが発覚した場合の対応 まとめ|税務上も刑事上も重大なリスク。未然防止と早期対応を こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。会社の資金が、役員によって私的に使い込まれる(横領・不正経費使用など)という事態は、経営に重大な損害を及ぼすだけでなく、税務上の処理にも複雑な対応を求められます。 今回は、法人税における所得計算への影響を中心に、役員の使い込みが発覚した場合の税務上の取り扱いについて解説します。 リンク 税大ジャーナル 横領等の不法行為と帰属を巡る一考察 1 横領損失と損害賠償請求権は同時に計上されるのが原則 役員による資金の不正使用が判明した場合、会社にとっては「横領損失」が発生したとされます。税務上は、原則として横領が発覚した時点で損失を損金計上します。 同時に、会社は加害者である役員に対して損害賠償請求権を取得し、損害賠償相当額を益金に計上します。これを「同時両建説」と呼び、会計処理の例は以下のとおりです。 (借方)横領損失 10,000千円 / (貸方)売掛金 10,000千円 (借方)未収入金 10,000千円 / (貸方)損害賠償金収入 10,000千円 この処理により、損金と益金が同額となるため、所得金額には影響しません。 従業員の横領について >…

27 5月 2025

従業員の横領が発覚したら?法人税の所得計算3つのポイント

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。今回は、会社経営にとって最もショックな出来事のひとつ、「従業員による横領」が起きてしまった場合の法人税における所得計算のポイントを解説します。 横領行為はあってはならないものですが、発生してしまった場合には、損失の処理や損害賠償請求権の扱いなど、税務処理が非常に複雑です。事例を交えながら、どのような会計・税務対応が求められるかを見ていきましょう。 リンク 税大ジャーナル 横領等の不法行為と帰属を巡る一考察 横領が発覚した場合の所得計算のポイント 横領が起きた場合、法人税の観点からは次の3つの項目が重要になります。 1. 売上の計上時期 従業員が横領したとしても、会社名義で商品が販売されていれば、販売時点で売上として計上しなければなりません。代金が会社に入金されていないという事実は、売上の計上義務を免れる理由にはなりません。 2. 横領による損失(横領損失)の損金算入 横領された金額については、「横領損失」として損金算入が認められます。この場合、損失を計上するのは「横領が発覚した事業年度」ではなく、実際に横領が行われた事業年度とされることが一般的です。 3. 損害賠償請求権の益金(雑収入)計上時期 会社は、横領した従業員に対して損害賠償請求権を有します。この損害賠償請求権に相当する金額は、雑収入として益金に算入する必要がありますが、その計上時期にはいくつかの考え方があります。 通説:同時両建説(損失と益金を同年度に計上) 税務上は「損失が発生した事業年度に損害賠償請求権も同時に益金計上する」とする考え方が通例です。これを「同時両建説」といいます。 まとめ|横領と所得の関係は「売上・損失・雑収入」を同じ期に揃えることが原則 従業員の横領があった場合には: ■商品販売による売上 →…

27 5月 2025

貸倒引当金とは?会計・税務の違いと実務のポイント

目次 第1章|貸倒引当金とは? 第2章|会計上の貸倒引当金 第3章|税務上の貸倒引当金の考え方 第4章|一括評価金銭債権の取扱いと繰入限度額 第5章|個別評価金銭債権の取扱いと繰入限度額 第6章|消費税との関係 第7章|まとめとアドバイス こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。 企業活動では、売掛金や貸付金などの債権回収リスクと常に隣り合わせです。 「この取引先、本当に払ってくれるだろうか?」そのような不安を抱えた経験をお持ちの方も多いと思われます。 今回は、万一に備えて損失を事前に計上する「貸倒引当金」について、会計上のルールと法人税法における取扱いについて解説いたします。 第1章|貸倒引当金とは? 貸倒引当金とは、将来債権が貸倒れとなる可能性に備えて、あらかじめ費用(損金)として見積もり計上する会計上の処理 です。 対象となるのは、売掛金や貸付金などの金銭債権。取引先の倒産や経営破綻によって回収不能となるリスクを踏まえ、早めに損益に反映する仕組みです。 第2章|会計上の貸倒引当金 計上の4要件 企業会計原則では、以下すべてを満たす場合に引当金を計上することが求められます。 将来の特定の費用または損失である…

27 5月 2025

貸倒損失とは?税務上の3つの判断基準と実務で注意すべきポイント

目次 1 法律上の貸倒れ(法基通9-6-1) 2 事実上の貸倒れ(法基通9-6-2) 3 形式上の貸倒れ(法基通9-6-3) 4 実務上の注意点と対応策 5 まとめ こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。企業経営において、取引先からの売掛金や貸付金が回収できないという「貸倒れ」は、できれば避けたい事態です。しかし、万一発生してしまった場合でも、税務上適切に処理することで、損金に算入し税負担を軽減できる場合があります。 なお、、「貸倒損失」として損金に計上するには、法人税法基本通達に定められた厳格な要件を満たす必要があります。単に回収できないからといって、損金処理できるわけではありません。 今回は、法人税基本通達9-6-1〜9-6-3に基づいて、貸倒損失として認められるための3つの判断基準と、実務上の注意点について解説します。 情報元:国税庁 貸倒損失として処理できる場合 1 法律上の貸倒れ(法基通9-6-1) 法律に基づいた手続きや債権者間の協議等により、債権の全部または一部が正式に切り捨てられた場合に該当します。 主な具体例 会社更生法や民事再生法に基づく更生計画・再生計画の認可決定…

27 5月 2025

債権者集会等があった場合の貸倒れ処理とは?

目次 1 設例:売掛先の経営悪化と債権者集会の発生 2 貸倒れの2分類:法的貸倒れと事実上の貸倒れ 3 A社への対応:時期尚早な貸倒処理に注意 4 B社への対応:更生手続開始 5 まとめ:債務整理・債権回収不能の判断には慎重さと証拠が必要 こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。今回は、取引先の経営悪化や債権者集会の発生時における「売掛金や貸付金の貸倒損失処理」について、法人税法上の取扱いを解説します。 本ブログは次のブログの具体例となっています。 情報元:国税庁 貸倒損失として処理できる場合 貸倒損失について > 1 設例:売掛先の経営悪化と債権者集会の発生 ある得意先A社は、業況悪化により10か月間にわたり売掛金の支払を停止しています。債権者間では債権回収に向けた相談が始まっており、当社としてもA社との取引を停止したうえで今後は現金取引へ移行する意向です。 また、別件として、倒産した会社社長が更生手続開始の申立てを行ったB社に対して、当社は2,000万円の貸金を有しており、担保不動産の査定額3,000万円のうち300万円が回収見込額とされています。このようなケースにおいて、税務上の貸倒処理が可能か否か、判断基準が求められます。…

27 5月 2025

取引を打ち切った得意先に対して残っている売掛金を、貸倒処理してよいのか?

目次 1 貸倒処理の原則:債権者の弁済不能と判断されること 2 9-6-3(形式的貸倒れ)と他の貸倒れ規定との違い 3 継続的な取引停止と「1年以上経過」の適用について 4 取引停止後の処理と経済的実態に基づく判断 5 適用する貸倒れ規定に応じた適切な処理が重要 こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。今回は「取引を打ち切った得意先に対する売掛金について、貸倒処理が認められるか」という論点を、法人税基本通達と実務に照らして解説します。 本ブログは次のブログの具体例となっています。 情報元:国税庁 貸倒損失として処理できる場合 貸倒損失について > 1 貸倒処理の原則:債権者の弁済不能と判断されること 売掛金等の金銭債権の貸倒処理については、原則として「相手方が弁済不能となった場合」において、その未回収債権の全額または一部について貸倒処理をすることが認められます。 この点、取引停止後1年以上経過し、かつ相手先との継続的な取引が行われていない債権について、備忘価額(1円)を除いて貸倒損失として損金処理できる旨が定められています。…