こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
今回は「自社のレストラン等で接待をした場合の交際費の額はどう決めるべきか?」というテーマについて、税務上の取扱いと実務上の注意点を解説します。
1 自社施設で接待した費用も交際費になる?
社内で飲食店やクラブを運営している会社が、自社の顧客をその施設に招いて接待した場合、その費用も交際費として取り扱われるのかという疑問があります。
まず、税法上の定義では、交際費とは「法人がその得意先、仕入先その他事業に関係ある者に対して行う接待・贈答・慰安等の行為に要する費用」とされています。
原則としては、一般のお客様から徴収する金額が交際費となりますが、以下の場合のように、提供した料理等の原価を正しく計算し、その原価を交際費としている場合にはその計算も認めらるものと考えています。
- ■製造原価を適正に把握している場合
- ■継続的に原価ベースで処理している場合
- ■合理的な原価計算に基づいている場合
接待の対象や目的に関係なく、その行為のために実際に支出した費用が「交際費」となります。たとえ自社で料理を提供したとしても、それに要した材料費や人件費は交際費に含めてよいとされています。
2 計上する交際費は「原価」
自社レストランで提供した飲食物のうち、顧客接待のために使用されたものについては、「その飲食物の原価」が交際費の対象になります。
ここで言う原価とは、主に以下のような費用です:
■材料費(食材等の仕入原価)
■人件費(調理・提供に携わる従業員の給与)
■その他、料理の提供に直接必要な経費
これらを集計した金額が、交際費として損金算入される対象です。
なお、原価の算出が困難な場合には、一般顧客に提供している販売価格に「原価率」を掛けた金額を交際費とすることも認められます。たとえば、販売価格が5,000円で原価率が60%であれば、交際費相当額は3,000円となります。
3 店舗建物の減価償却費や固定資産税はどう扱う?
次に問題となるのが、「自社建物の中で接待をした場合、建物の減価償却費や固定資産税等の維持費も交際費に含めるべきか?」という点です。
これについては、以下のような考え方になります:
■建物の減価償却費や固定資産税は、間接的な費用とみなされるため、交際費としての直接性が認められず、原則として交際費には含めません。
■一方、接待専用に使用される資産については、例外的に一部の費用が交際費に含められる可能性もありますが、明確に区分されていることが前提です。
4 経理処理のポイント:交際費は「製品」扱いで処理
自社施設での接待費用については、会計上、以下のように処理します。
■提供した料理の原価 → 交際費「製品」(または売上原価)として処理
つまり、自社で飲食物を調理・提供して接待した場合には、実際にかかった原価を交際費として計上し、税務処理を行う必要があります。販売価格ベースではなく、必ず原価ベースで集計することが重要です。
5 まとめ:自社で接待する場合も原価ベースで交際費を計上
自社施設を利用した接待であっても、税務上は「通常の交際費」として原価ベースでの計上が必要です。
建物などの間接費を除き、材料費や人件費などの直接費用を正確に把握し、合理的に交際費として処理することがポイントとなります。
顧客サービスの一環として自社レストラン等を活用する場合も、税務リスクを回避するためには「費用区分の正確な把握」と「根拠ある原価計算」が不可欠です。