こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
個人事業を営む中で、ご家族に仕事を手伝ってもらうというケースは珍しくありません。特に配偶者や子ども、親などと生計をともにしている場合、「せっかく働いてもらっているのだから給与を出したい」と考えるのは自然なことです。
しかし、家族に支払う給与については税法上の制限があります。青色申告者であれば「青色事業専従者給与」として、一定の要件を満たすことで家族への給与を必要経費として計上することが可能になります。
この記事では、青色事業専従者給与の制度概要、適用要件、手続き、注意点などを、解説します。
📚 目次
第1章|青色事業専従者給与とは?
「青色事業専従者給与」とは、青色申告を行っている個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族に給与を支払う場合に、一定の条件を満たせばその給与を必要経費にできる制度です。
実際に支払った給与額が経費になる点が特徴です。
第2章|青色事業専従者となるための要件
青色事業専従者給与として経費に算入するためには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 青色申告者と生計を一にしている配偶者または親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- その年を通じて6ヶ月を超える期間、または従事可能期間の半分超、青色申告者の事業に“専ら”従事していること
「専ら従事」の具体的な基準
「専ら従事しているかどうか」は、非常に重要なポイントです。以下のような場合は、専ら従事しているとはみなされません。
学生や生徒である(夜間通学で昼間勤務する場合を除く)
他に職業がある(パートや副業も含むが、時間が極めて短ければ例外あり)
老衰や障害等で十分な労務提供が難しい
税務調査では、「勤務時間」や「収入の割合」などの客観的な証拠をもとに判断されます。たとえ副業があっても、主として青色事業に従事していれば、専従性が認められる場合もあります。
第3章|必要経費にできる金額の上限とは?
専従者に支払った給与のうち、労務の対価として相当と認められる範囲内であれば、全額が必要経費として認められます。
逆に、明らかに業務内容に見合わない高額な給与を支払っている場合には、その超過部分は経費として認められません。給与の金額は、職務の内容や従事時間、市場相場を参考に適正に設定することが重要です。
第4章|適用には事前手続きが必要!
青色事業専従者給与を経費に算入するには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必須です。
【提出のタイミング】
原則:その年の3月15日まで
1月16日以降に事業開始 or 専従者が新たに加わった場合:開始から2ヶ月以内
【届出書の内容】
専従者の氏名
職務の内容
給与の金額と支給時期
第5章|制度適用にあたっての注意点
1. 控除対象配偶者・扶養親族にはなれない
青色事業専従者に給与を支払うと、その人は控除対象配偶者・扶養親族の対象外となるため、配偶者控除や扶養控除は受けられません。
2. 不動産所得では「事業的規模」が必要
青色事業専従者給与は、不動産所得にも適用されますが、貸付が事業的規模(5棟10室基準等)である必要があります。
3. 休業中の支払いはNG
事業が休業している期間に支払われた給与は、労務の対価とはみなされず、経費にできません。
4. 従事期間が短い場合の例外
年の途中から事業に従事した場合でも、その年の従事可能期間の2分の1超であれば専従者と認められます。この場合、従事開始から2ヶ月以内に届出を行う必要があります。
5. ひとり親控除との関係
専従者として給与をもらっている子がいても、納税者がひとり親控除の要件を満たしていれば併用は可能です。
第6章|まとめ
青色事業専従者給与は、事業に貢献してくれている家族への給与を正当に経費計上できる強力な制度です。
制度の活用には、
専従者要件の確認
事前の届出
適正な給与額
実態の記録(業務日報など)
といった点が欠かせません。