従業員旅費・交通費の仕入税額控除はインボイス不要?

2025年5月15日
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2025年5月15日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

インボイス制度が始まり、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として「帳簿+適格請求書等の保存」が必要です。

しかし、すべての経費について請求書を取り寄せるのは、現実的に難しい場面もあります。
特に、従業員への出張旅費や通勤手当のような経費精算では、「どこまで請求書が必要なの?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。

今回は、従業員旅費等に関するインボイス制度の特例と、
立替払い・タクシーチケット・内定者交通費の取扱いについて詳しく解説します。


第1章|インボイス不要!帳簿だけで控除できる「従業員旅費等」の特例

次のような従業員に支払う通常の経費は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます

✅ 帳簿保存のみでOKな経費

  • 出張旅費

  • 宿泊費

  • 日当

  • 通勤手当

これらは、「通常必要と認められる支出」として、特例的に請求書等の保存が不要とされています。


✅ 帳簿に記載すべき事項

項目内容
相手方の氏名旅費を支給した従業員の氏名(住所は不要)
取引日出張・宿泊・通勤等の実施日
内容「従業員旅費」「出張日当」など、支出の内訳がわかるように記載
支払対価の額実費・定額支給額などの金額を明記

第2章|従業員が立替払いした場合は原則通り

業務上の支払いを従業員が立替払いし、後から精算する場合は、以下のような扱いになります。

❗ ポイント:立替払いは「サプライヤーとの取引」が前提

  • サプライヤー(販売店・飲食店など)が発行した適格請求書・適格簡易請求書が必要

  • レシートの宛名が従業員名でも、サプライヤーが発行したものであれば有効

  • 従業員名簿などの保存義務はなし


第3章|タクシー利用時はどう処理する?

✅ 原則:タクシー利用も「従業員旅費」扱いで帳簿のみでOK

  • 出張等に伴うタクシー利用は、「従業員旅費」として帳簿のみの保存でOK

⚠ 特殊ケース:タクシーチケットの精算書しかない場合

  • クレジットカード会社の精算書などインボイスの保存が難しい場合

  • 経過措置により、帳簿のみで一定割合(80%または50%)の仕入税額控除が認められる

📝 この経過措置は、制度導入初期の実務上の混乱を軽減するためのものです。


第4章|内定者や採用面接者への交通費は?

現在、国税庁のインボイスQ&Aや通達では、明確な記載がありません。

したがって、

  • 内定者・面接者は「従業員等」に該当しないため

  • インボイスの保存義務が生じる可能性が高い

と解釈するのが安全です。

🚫 「従業員旅費」特例は、在職中の社員・役員等に限定されると考えましょう。


まとめ|「インボイス不要」かどうかは目的と支出先で判断

経費の種類インボイス必要?説明
出張旅費・日当・通勤手当❌不要(帳簿のみ)通常必要な支出として特例対象
従業員の立替払い(物品購入等)✅必要サプライヤー発行の適格請求書等が必要
タクシー利用(出張等)❌不要(帳簿のみ)「旅費」として処理可能
タクシーチケット精算書のみ⭕経過措置あり一定割合で仕入税額控除が可能

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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