中小企業必見!賃上げ促進税制が大きく変わっています

2025年5月15日
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2025年5月15日 管理人

こんにちは。税理士の飯野明宏です。

今回は、令和6年度(2024年度)税制改正で大きく見直された「賃上げ促進税制」について解説します。
この制度は、従業員への給与引き上げや人材投資を行う企業を税制面で支援するもので、特に中小企業向けに注目すべき変更点がいくつかあります。


第1章|賃上げ促進税制とは?

賃上げ促進税制とは、企業が前年度より従業員の給与を増やした場合に、その増加分の一定割合を法人税や所得税から控除できる制度です。

これまで「中小企業向け」と「大企業向け」の2分類でしたが、今回の改正により「中堅企業向け」が新たに加わり、3パターンに細分化されました。


第2章|中小企業向けの改正ポイント

1. 税額控除の繰越が可能に!

これまで赤字などで税額控除を活用できない場合、その年で打ち切りとなっていましたが、
今後は使いきれなかった控除額を最大5年間繰越できるようになります。

適用要件

  • 繰越対象となる年の申告時に「特別控除に関する明細書」の提出が必要

  • 繰越適用年でも給与支給額が前年度比で1円以上増加していること

※繰越控除は「中小企業向け制度」のみで利用可能。中堅企業向け制度を選択した場合は使えません。


2. 教育訓練費での上乗せ要件が緩和!

従来、前年比10%以上の教育訓練費の増加が要件でしたが、以下の通り緩和されました:

  • 前年比5%以上増加

  • 教育訓練費の額が給与総額の0.05%以上

この要件を満たすと、控除率が10%上乗せされます。


3. くるみん・えるぼし認定による追加優遇措置

厚労省が認定する「くるみん」や「えるぼし(女性活躍推進)」を取得した企業に対し、控除率の5%上乗せが新設されました。

要件は2パターン:

  • 適用年度中に「くるみん・くるみんプラス」「えるぼし(二段階以上)」のいずれかを取得

  • 適用年度末時点で「プラチナくるみん・プラチナえるぼし」のいずれかを取得

※これらの認定には申請から2年程度かかる場合もあります。早めの準備が重要です。


第3章|制度適用の注意点と具体的数値

▶ 控除率(通常の場合)

給与増加率(前年比)控除率
1.5%以上15%
2.5%以上30%

※上乗せがあれば、最大+15%(教育訓練+認定)で最大45%の控除も可能。

▶ 控除上限

税額控除は、法人税額等の20%が限度となります(繰越控除の場合も同様)。


第4章|中小企業者等の定義

この制度の「中小企業者等」とは、以下の法人を指します:

  • 資本金または出資金が1億円以下(大企業の子会社等は除く)

  • 出資がない法人で従業員1,000人以下

  • 協同組合など一定の法人

※ただし、直前3期の所得金額平均が15億円を超える法人は対象外です。


第5章|適用開始時期と実務への影響

この改正は、令和6年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
たとえば3月決算法人なら、令和7年3月期決算分から対象です。


第6章|まとめ|早めの準備で活用を

今回の改正は、中小企業にとって活用しやすくなった一方、「事前準備」や「認定取得」など、実務的な対応が求められる制度となっています。

特に、

  • 教育訓練費の増加

  • 認定(くるみん・えるぼし)の取得

  • 年度内の給与戦略
    などは、早期の社内整備がカギになります。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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