簡易課税制度とは?

2025年5月12日
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2025年5月12日 管理人

富士市・富士宮市の事業者が知るべき適用要件とメリット

こんにちは。
富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。

消費税の納税義務がある事業者の皆様にとって、意外と迷うのが「どの計算方法で消費税を計算するか?」という点です。
実は、消費税の計算には「本則課税(一般課税)」「簡易課税制度」という2つの方法があります。

この記事では、中小企業や個人事業主の方にとって、事務負担を大きく軽減できる「簡易課税制度」について詳しく解説します。


1 簡易課税制度とは?

簡易課税制度とは、売上に一定の「みなし仕入率」を乗じて仕入税額控除額を計算する特例制度です。
通常の本則課税では、実際の仕入や経費にかかる消費税を1件ずつ集計しますが、簡易課税ではその必要がなく、計算がシンプルになるのが特徴です。

仕組みのイメージ

納付税額 = 売上にかかる消費税 - (売上 × みなし仕入率 × 消費税率)


2 簡易課税の適用要件

簡易課税制度を利用するには、次の2つの条件を満たす必要があります。

条件内容
① 売上高の要件基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下であること
② 届出書の提出「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用する課税期間の開始日前日までに税務署へ提出

補足ポイント:

  • ■一度選択すると2年間は変更できません(原則)

  • ■届出を出していないと簡易課税は使えません。

消費税の計算が簡単な事業者


3 事業区分と「みなし仕入率」

簡易課税制度のキモは、事業の種類に応じた「みなし仕入率」です。
売上にこの率を掛けて仕入控除相当額を算出します。

簡易課税制度における事業区分とみなし仕入率
事業区分内容みなし仕入率
第1種卸売業90%
第2種小売業80%
第3種製造業、建設業など70%
第4種飲食業、サービス業の一部60%
第5種サービス業(自由業含む)等50%
第6種不動産業40%

 事業が複数ある場合

複数の事業にまたがる場合は、各区分の売上割合で加重平均してみなし仕入率を出します。
ただし、特定事業が全体の75%以上を占める場合は、その区分1本で計算可能な特例があります。

小売業の商店


4 簡易課税制度のメリットと注意点

メリット

  • ■帳簿・請求書の管理が簡単になる(仕入控除の明細が不要)

  • ■税務処理の負担が軽い

  • ■比較的予測しやすい税額計算

注意点

  • ■実際の仕入控除額が多い場合は不利になることもある

  • ■本則課税よりも納税額が多くなる可能性がある

  • ■2年間は原則としてやめられない


5 簡易課税を選ぶべきか?判断のポイント

簡易課税は便利な制度ですが、誰にとっても有利とは限りません。

以下のようなケースでは慎重な判断が必要です。

消費税課税方式の選択目安(経費構造による判断)
ケース向いている制度
経費(仕入れ)が少ない/
サービス業などで仕入税額控除が少ない
簡易課税制度が有利な可能性大
経費が多い/
仕入税額控除を多く受けられる(製造業・小売業など)
本則課税制度が有利な可能性あり

コラム最下署名

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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