法人税における「益金の額」とは?収益との違いと税務調整の仕組み

2025年5月10日
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2025年5月10日 管理人

法人税における「益金の額」とは?収益との違いと税務調整の仕組み

会計上の「収益」と税法上の「益金」という2つがあります。これらは似て非なるものであり、法人税の計算上は「益金の額」が重要な意味を持ちます。

この記事では、法人税法における「益金の額」の定義と範囲、収益との違い、そして税務調整や別表四の役割について詳しく解説します。


第1章|「益金の額」とは?法人税法における基本定義

法人税法第22条第2項では、課税標準となる所得金額は「益金の額」から「損金の額」を控除して算出するものと規定されています。

法人税の「所得」はどう決まる?課税標準の仕組み

1-1. 益金とは「収益のうち課税対象になるもの」

益金の額とは、基本的には資本等取引以外の取引に伴って生じた収益を指します。具体的には、以下のような収益が該当します。

  • 商品・製品等の販売収益

  • 固定資産や有価証券等の譲渡による収益

  • 請負契約に基づく役務の提供収益

  • その他の資本等取引に該当しない収益全般

これらに加えて、法人税法特有の取扱いとして以下のようなケースも益金に含まれます。

  • 無償譲渡による収益:資産をタダで提供した場合でも、その時価を収益として計上

  • 無償提供役務の収益:サービス提供に対して金銭を受け取らない場合も、経済的価値を益金として認識

  • 無償で資産を譲り受けた場合の収益:受贈した資産の時価分を益金に算入


第2章|企業会計の「収益」との違いとは?

法人税法上の益金と、企業会計上の収益は一致しないことがしばしばあります。これは、両者の目的が異なるためです。

2-1. 両者の目的の違い

比較項目企業会計法人税法
目的経営実態の正確な把握、投資家等への開示公平な課税、税収の確保、産業政策
基準会計基準(企業会計原則等)法人税法に定める「別段の定め」
特徴実現主義・発生主義ベース課税上の公平性・合理性重視

2-2. 会計上の収益が益金にならない例・その逆もある

企業会計上では収益として計上していても、税法上は益金に含まれないケースがあります。たとえば:

  • 受取配当金:会計上は収益だが、一定の条件を満たせば益金不算入

  • 資産の贈与:会計上は収益計上されないことが多いが、税法では益金算入対象


第3章|収益の計上時期と法人税法のルール

課税所得は、収益の計上時期によっても変動します。法人税法では、一定の原則と特例を設けて、計上タイミングを定めています。

3-1. 一般的な収益計上基準

取引類型計上時期補足
商品販売引渡基準出荷・検収など継続的な基準で判断
請負契約完成引渡基準一定要件を満たす場合、部分完成基準も適用
長期工事工事進行基準大規模・長期に該当する場合、強制適用

3-2. 延払基準などの特例

例外として、代金受領に時間がかかる取引については「延払基準」を用いて、収益計上を繰り延べることが認められています。


第4章|益金不算入の具体例とその趣旨

法人税法では、企業会計上は収益とされる項目であっても、益金に算入しないと定める「別段の定め」が存在します。

4-1. 内国法人間の受取配当金

配当金は株式投資の収益であるため会計上は収益ですが、法人税法では二重課税を避けるため、一定の計算式により益金不算入とされます。


第5章|圧縮記帳という税法独自の調整制度

特定の補助金や資産譲渡益に対しては、「圧縮記帳」による課税繰延べが可能です。これは、企業の再投資を支援するための税制優遇です。

5-1. 圧縮記帳の仕組み

たとえば、補助金で機械を購入した場合、その補助金相当額だけ取得価額を減額し、減額分を損金に算入できる場合があります。


第6章|税務調整と申告書別表四の役割

会計上の当期純利益から法人税法上の所得を算出するためには、「税務調整」が不可欠です。その中心的役割を果たすのが申告書別表四です。

6-1. 別表四の加算・減算項目

  • 加算項目:会計では収益でなくても益金となるもの(例:計上漏れ)

  • 減算項目:会計では収益でも益金にならないもの(例:受取配当)

この別表四を通じて、益金・損金を調整し、法人税の課税所得が確定します。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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