こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
会社が役員に対して社宅やそれに類する住宅を貸与する際には、税務上の明確なルールが存在します。これを誤解したまま運用すると、給与課税として否認されるリスクがあり、追徴課税の対象となることもあります。
この記事では、社宅貸与時に押さえておくべき税務上のポイントを解説します。
1 役員社宅と「賃貸料相当額」の基本
賃貸料相当額とは?
会社が役員に社宅を貸与する際、一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば課税対象とはなりません。
この賃貸料相当額が、「税務上の適正な家賃の目安」となります。役員からこの金額以上の家賃を受け取っていれば、住宅提供による経済的利益はないとみなされ、給与課税されません。
2 賃貸料相当額の計算方法
社宅の規模・所有形態によって、賃貸料相当額の算出方法が異なります。
小規模な住宅の場合
以下の合計額が賃貸料相当額となります:
- 固定資産税課税標準額 × 0.2%
- 12円 ×(総床面積(㎡) ÷ 3.3)
- 敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%
※「小規模な住宅」とは:
- ■法定耐用年数30年以下:132㎡以下
- ■法定耐用年数30年超:99㎡以下
小規模住宅に該当しない場合
【1】会社が所有する住宅の場合
以下の合計額を12分割:
- ■建物:固定資産税課税標準額 × 12%(耐用年数30年超なら10%)
- ■敷地:固定資産税課税標準額 × 6%
【2】会社が他から借りた住宅を貸与する場合
次のうち高い方が賃貸料相当額:
- ■会社が大家に支払う家賃 × 50%
- ■上記【1】の算出方法による額
3 いわゆる「豪華社宅」の取り扱い
賃貸料相当額の簡便計算式が使えないケースが「豪華社宅」です。
判定基準
- ■床面積が240㎡を超える住宅
- ■プールやホームシアターなど過剰設備を有する住宅
- ■役員の嗜好性が強く反映されている住宅
この場合は、時価ベースの「通常の使用料相当額」が賃貸料相当額となります。
4 給与として課税されるケース
以下の場合は、経済的利益が生じたとみなされ、その差額が給与課税対象となります。
- ■無償で貸与した場合 → 全額が課税
- ■賃貸料相当額より少ない家賃しか受け取っていない場合 → 差額が課税
- ■住宅手当として支給/役員が個人で契約 → 支給額の全額が課税
5 制度を適正に運用するためのポイント
法人名義での契約が必須
役員個人の契約ではなく、法人契約にしておくことが大前提です。
社内規定・契約書・振込記録の整備
社宅制度に関する社内規定、賃貸借契約書の保管、家賃の振込記録など、第三者が見ても合理性がある資料の整備が必要です。
毎年の固定資産税情報を把握
計算に使う固定資産税の課税標準額は、毎年の通知書から確認しましょう。
6 まとめ 役員社宅は税務ルールの理解が必須
役員に社宅を貸す場合、「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取ることが必要
床面積・所有形態・住宅の性質によって計算方法が異なる
豪華社宅や名義ミスなどがあると、全額給与課税となる恐れあり
制度を導入する際は、社内規定の整備と、国税庁の指針に基づいた運用が欠かせません。不安がある場合は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。