役員に社宅を貸したとき、知っておくべき税務と注意点

2025年5月25日
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2025年5月25日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

会社が役員に対して社宅やそれに類する住宅を貸与する際には、税務上の明確なルールが存在します。これを誤解したまま運用すると、給与課税として否認されるリスクがあり、追徴課税の対象となることもあります。

この記事では、社宅貸与時に押さえておくべき税務上のポイントを解説します。

リンク 国税庁 役員に社宅などを貸したとき

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1 役員社宅と「賃貸料相当額」の基本

賃貸料相当額とは?

会社が役員に社宅を貸与する際、一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば課税対象とはなりません

この賃貸料相当額が、「税務上の適正な家賃の目安」となります。役員からこの金額以上の家賃を受け取っていれば、住宅提供による経済的利益はないとみなされ、給与課税されません。


2 賃貸料相当額の計算方法

社宅の規模・所有形態によって、賃貸料相当額の算出方法が異なります。

小規模な住宅の場合

以下の合計額が賃貸料相当額となります:

  1. 固定資産税課税標準額 × 0.2%
  2. 12円 ×(総床面積(㎡) ÷ 3.3)
  3. 敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%

※「小規模な住宅」とは:

  • ■法定耐用年数30年以下:132㎡以下
  • ■法定耐用年数30年超:99㎡以下

小規模住宅に該当しない場合

【1】会社が所有する住宅の場合

以下の合計額を12分割:

  • ■建物:固定資産税課税標準額 × 12%(耐用年数30年超なら10%)
  • ■敷地:固定資産税課税標準額 × 6%

【2】会社が他から借りた住宅を貸与する場合

次のうち高い方が賃貸料相当額:

  • ■会社が大家に支払う家賃 × 50%
  • ■上記【1】の算出方法による額

3 いわゆる「豪華社宅」の取り扱い

賃貸料相当額の簡便計算式が使えないケースが「豪華社宅」です。

判定基準

  • ■床面積が240㎡を超える住宅
  • ■プールやホームシアターなど過剰設備を有する住宅
  • ■役員の嗜好性が強く反映されている住宅

この場合は、時価ベースの「通常の使用料相当額」が賃貸料相当額となります。

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4 給与として課税されるケース

以下の場合は、経済的利益が生じたとみなされ、その差額が給与課税対象となります。

  • ■無償で貸与した場合 → 全額が課税
  • ■賃貸料相当額より少ない家賃しか受け取っていない場合 → 差額が課税
  • ■住宅手当として支給/役員が個人で契約 → 支給額の全額が課税

5 制度を適正に運用するためのポイント

法人名義での契約が必須

役員個人の契約ではなく、法人契約にしておくことが大前提です。

社内規定・契約書・振込記録の整備

社宅制度に関する社内規定、賃貸借契約書の保管、家賃の振込記録など、第三者が見ても合理性がある資料の整備が必要です。

毎年の固定資産税情報を把握

計算に使う固定資産税の課税標準額は、毎年の通知書から確認しましょう。


6 まとめ 役員社宅は税務ルールの理解が必須

  • 役員に社宅を貸す場合、「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取ることが必要

  • 床面積・所有形態・住宅の性質によって計算方法が異なる

  • 豪華社宅や名義ミスなどがあると、全額給与課税となる恐れあり

制度を導入する際は、社内規定の整備と、国税庁の指針に基づいた運用が欠かせません。不安がある場合は、必ず税理士などの専門家にご相談ください。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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