【従業員への食事代】税金がかからない方法とは?

2025年5月22日
Posted in コラム
2025年5月22日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

中小企業経営者の中には、従業員の福利厚生として「食事代の支給」を検討されている方も多いのではないでしょうか。実際、従業員のモチベーション向上や人材定着において「食事の提供」は非常に有効な手段です。

ただし、食事代の支給方法によっては「給与」とみなされて課税対象になる可能性があります。この記事では、課税されないためのルール正しい経理処理の方法を、解説します。


1 従業員に支給する食事代、原則は「給与課税」

前提として、従業員の昼食や食事代は本来、各自の生活費に該当します。そのため、会社が全額または一部を負担すると、現物給与として所得税の課税対象になる可能性があります。

さらに、この金額は社会保険の報酬額の算定基礎にも含まれるため、保険料負担も増加してしまいます。

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2 非課税とされる「食事の支給」要件とは?

2-1. 基本的な非課税要件

以下の要件をすべて満たす場合は、課税されず、福利厚生費として非課税処理が認められます。

非課税の要件(通常勤務時の食事提供)

  • ■従業員が食事代の半額以上を負担していること
  • ■会社の負担額が1ヶ月あたり3,500円(税抜)以下であること

具体的な計算例

たとえば:

  • 食事代が月10,000円 → 従業員が5,000円以上負担、会社負担5,000円 → ✕(3,500円を超えて課税対象)
  • 食事代が月8,000円 → 従業員が4,500円、会社負担3,500円 → 〇(要件を満たし非課税)

重要なポイント

■全額課税の注意点 3,500円の上限を1円でも超えると、超過分だけでなく会社負担分の全額が課税対象となります。上記の1つ目の例では、500円の超過分だけでなく、会社負担の5,000円全額が給与として課税されます。

■従業員負担の徴収方法 会社が費用を一旦立て替え、給与天引き等で従業員から自己負担分を確実に徴収することが必要です。口約束や後日精算では、税務調査で否認される可能性があります。

■適用対象者 この非課税規定は、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトを含む全従業員が対象となります。特定の従業員のみを対象とした場合、福利厚生費として認められない可能性があります。


情報元:国税庁 食事を支給したときの非課税限度額の判定

情報元: 国税庁 食事を支給したとき

2-2. 支給方法による税務上の違い

食事代の支給方法によって、税務上の取り扱いが大きく異なります。以下、それぞれの方法について解説します。

現物支給(推奨)

■弁当の購入・配布 会社が弁当を購入して従業員に配布し、従業員から自己負担分を徴収する方法です。最も確実に非課税要件を満たせる方法として推奨されます。

■社員食堂での提供 社内に食堂を設置し、直接食事を提供する方法です。大企業でよく採用されており、従業員の利便性も高い方法です。

電子マネー・食事券(条件付きで可能)

食事専用のサービスを適切に運用すれば非課税での支給が可能ですが、選択するサービスによってはリスクがあります。詳細は2-3で解説します。

現金支給(原則課税対象)

食事代として現金を支給する場合、原則として給与所得として課税対象となります。ただし、深夜勤務時の夜食代については例外規定があります(後述)。


2-3. 電子マネー・食事券での支給の注意点

近年、電子マネーや食事券を活用した食事補助が注目されていますが、税務上のリスクを避けるためには慎重な検討が必要です。

推奨される専用サービス

■チケットレストラン

例えばエデンレッドジャパンが挙げられます。

  • 全国25万店舗以上で利用可能
  • 食事・飲料に用途限定
  • システムによる適切な非課税管理
  • 税務調査での指摘リスクが低い

運用例: 月7,000円分の電子カードを配布し、従業員から3,500円を給与天引きすることで、非課税要件(半額負担・3,500円以下)を満たします。

避けるべき支給方法

■汎用電子マネー・プリペイドカード

  • QUOカード:書籍・雑貨等にも使用可能
  • 交通系電子マネー:食事以外の用途が広範囲
  • 一般商品券:換金性が高い

これらは「食事に限定されない」「換金が容易」という理由で、税務調査において給与認定される可能性が非常に高くなります。

税務調査での指摘事例

■よくある否認理由

  • 使用目的が食事に限定されていない
  • 換金性がある(チケットショップで売買可能)
  • 管理・証明が不十分

■対策のポイント

  • 食事専用システムの選択
  • 利用記録の適切な管理
  • 従業員負担分の確実な徴収

2-4. 深夜勤務時の夜食代

深夜勤務等で食事提供が物理的に困難な場合、特例として現金支給が認められています。

非課税の条件

  • 対象時間:22時から29時までの深夜勤務
  • 支給限度額:1回300円以下(税抜)
  • 支給理由:夜食の現物支給が困難な場合

注意点

この規定は「勤務時間内の深夜勤務」が対象です。通常の勤務時間(例:9時〜17時)の従業員が残業で22時を超えた場合は、原則として現物支給が必要となります。

適用例:

  • 深夜勤務のセキュリティスタッフへの夜食代
  • 24時間稼働工場の夜勤者への食事代
  • 病院の夜勤看護師への夜食支給

ただし、可能な限り弁当等の現物支給を検討し、物理的に困難な場合のみ現金支給を選択することが税務上安全です。

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3 福利厚生費以外で経費計上できる食事代とは?

非課税要件を満たさなくても、次のような場合には会社の経費として認められる可能性があります。

会議費

  • ランチミーティングでの軽食や弁当代など。

  • 社外との打ち合わせでも可。議事録や会議記録を残しておくことが重要。

社内飲食費(交際費)

  • 従業員の慰労会や懇親会など。

  • 頻度が高すぎると「給与」とみなされる可能性があるため注意。

出張手当(日当)

  • 出張時の食費を含む日当は、合理的な金額であれば非課税。

  • 会社規程を整備しておくことで、税務調査でも安心です。


4 まとめ|正しい手当支給で、福利厚生と節税を両立!

従業員の食事代を会社が負担する場合には、「非課税とされるための要件」や「経費処理方法」に十分注意が必要です。

食事・飲食補助等の支給方法と税務上の扱い
支給方法税務上の扱い
支給方法税務上の扱い
給与に上乗せして現金支給原則として課税対象(給与所得)
弁当を提供+自己負担あり非課税(※要件を満たす場合)
食事専用電子マネー
(チケットレストランなど)
非課税(※適切に運用する場合)
汎用電子マネー・商品券
(QUOカード、Suicaなど)
原則として課税対象(給与とみなされる)
会議に伴う食事非課税(会議費として損金算入可)
出張時の日当常識的な範囲で非課税
深夜勤務時の現金支給非課税(300円以下・条件あり)

 

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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