事業者が確認すべき「免税点」と「特定期間」
こんにちは。
富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
事業を始めてしばらく経つと、「そろそろ消費税の納税義務があるかも?」と気になるタイミングがやってきます。
今回は、消費税の納税義務が発生するかどうかの判定基準である「免税点制度」と「特定期間」について解説します。
1 消費税の納税義務はすべての事業者にある?
いいえ、すべての事業者が自動的に消費税を納めるわけではありません。
特に小規模な事業者には、事務負担を軽減する目的で、「一定の売上以下なら納税しなくてよい」という制度が用意されています。
これが「免税点制度」です。
2 免税点制度とは? 基準期間で判断されます
まず、最も基本的な判定方法が「基準期間による判定」です。
免税点制度の概要
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 個人事業主または法人(株式会社・合同会社など) |
判定基準 | 基準期間(2期前)の課税売上高が1,000万円以下であること ※設立初年度等は「特定期間」の判定が必要 |
納税義務の有無 | 上記要件を満たしていれば、その課税期間における消費税の納税義務なし(免税事業者) |
基準期間とは?
■個人事業主の場合 → その年の前々年
■法人の場合 → その事業年度の前々事業年度
例:
令和6年分の消費税について、
→ 個人:令和4年の課税売上高で判断
→ 法人(令和6年4月1日~令和7年3月31日):令和4年4月1日~令和5年3月31日の売上高で判断
3 課税売上高とは?免税売上も含まれる
「課税売上高」は、課税取引によって得た対価の合計額(税抜)です。
ただし、免税事業者は税込でOKとされています。
また注意すべき点として、非課税取引を除く売上全体が対象です。
4 特定期間による例外:急成長した事業は要注意!
基準期間で1,000万円以下でも、特定期間の売上が1,000万円を超えたら納税義務が生じるケースがあります。
これが「特定期間による納税義務の特例」です。
特定期間とは?
区分 | 特定期間 |
---|---|
個人事業者 | 前年の1月1日~6月30日 |
法人 | 前事業年度の開始日から6ヶ月間 |
例:
令和6年課税期間の個人事業主 → 特定期間は令和5年1月1日〜6月30日
令和6年4月~令和7年3月の法人 → 特定期間は令和5年4月1日〜9月30日(前事業年度の前半)
5 売上だけでなく「給与支払額」でも判定できる
特定期間においては、売上高だけでなく「給与等の支払額」でも判定可能です。
■売上はまだ少ないけど、従業員数が多くて給与が高い
■外注ではなく雇用を拡大している
そんな場合でも、消費税の納税義務が発生する可能性があります。
※給与等で判定する場合、国内事業者のみが対象です。
以上から、次の要件に該当した場合に課税事業者となります。
①特定期間における課税売上高が1,000万円を超える
②特定期間に支払った給与等の金額が1,000万円を超える
これら①、②のどちらかにより判定することができるので、両方に該当しなければ免税事業者として判定することができます。
6 事業の成長とともに「免税→課税」へ切り替えが発生
売上が増え、事業が順調に拡大していくと、「免税事業者」から「課税事業者」に切り替わるタイミングが来ます。
この時、以下の準備が必要です。
■適格請求書(インボイス)の発行登録
■経理処理の見直し(税抜処理か税込処理か)
■税務署への「課税事業者選択届出書」の提出(場合による)
まとめ 「納税義務があるか?」を正しく判定しよう
■消費税には「免税点制度」があり、一定以下の売上高なら納税義務はありません。
■ただし、「特定期間」に売上や給与が急増した場合、免税とならないケースもあります。