【相続税・財産評価】「路線価」とは?土地評価の基本

2025年6月10日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

相続が発生し、遺産の中に土地が含まれている場合、相続税の申告においてその土地の評価を行う必要があります。土地の評価額を算出する際に、まず最初に確認するのが「路線価」です。今回は、相続税申告で非常に重要な「路線価」について、その意味や調べ方、評価の基本を解説します。

1. 路線価とは何か

路線価とは、全国の市街地の道路に設定されている、1㎡あたりの土地の価格のことです。相続税や贈与税の計算のために土地を評価する場合に、この路線価を使用します。


リンク 国税庁 路線価図・評価倍率表

路線価は、国税庁によって毎年7月上旬に公表され、国税庁のホームページで確認できます。過去7年分までの路線価も、国税庁のホームページで調べることが可能です。

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2. 土地の「一物四価」について

土地には「一物四価」と言われるように、一つの土地に4つの価格が存在します。

①公示地価

土地の売買の参考にされる指標で、毎年3月下旬に公表されます。

②実勢価格

実際に土地が売買される際の価格です。

③相続税路線価

相続税・贈与税の土地評価に使用される価格です。公示価格の8割程度と言われています。

④固定資産税評価額

固定資産税の計算に使用される価格です。公示価格の7割程度と言われています。

これらの価格はそれぞれ異なる目的で使われ、金額も異なります。

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4. 路線価の調べ方

路線価は、主に以下の方法で調べることができます。

①国税庁ホームページ

「路線価図・評価倍率表」のページで、評価したい土地の都道府県を選択し、市区町村・地名を選択して路線価図を確認します。これが最も一般的な方法です。


リンク 国税庁 路線価図・評価倍率表

②全国地価マップ

一般財団法人 資産評価システム研究センターが運営するサイトで、固定資産税路線価だけでなく相続税路線価も調べられます。


リンク 全国地価マップ

③最寄りの税務署

税務署に路線価図が備え置かれています。

5. 路線価図の見方

路線価図を見ると、道路上に数字とアルファベットが書かれています。

数字の意味

その道路に面した土地の、1㎡あたりの路線価を表しています。単位は千円です。例えば「70E」とあれば、1㎡あたり70,000円(70千円)という意味です。

末尾のアルファベット

借地権割合を表しています。これは、土地を借りている人の借地権を評価する際に使用されます。例えば「E」なら借地権割合は50%です。

数字の周りの記号

土地の地区区分を示しています。これにより、後述する補正率が変わってきます。

6. 路線価を使った土地評価の基本

路線価路線価が設定されている土地の評価額は、原則として「路線価 × 土地の面積(地積)」で計算します。

例えば、路線価が70,000円/㎡の道路に面した100㎡の土地であれば、基本的な評価額は 70,000円 × 100㎡ = 700万円 となります。

ただし、これはあくまで基本的な計算方法です。実際の土地は、標準的な土地の条件(中央部、単独接面、標準的な形状など)を満たさないことがほとんどです。

7. 評価額を左右する「補正率」について

路線価は標準的な土地を前提に設定されています。しかし、土地の形が悪かったり、大きすぎたりすると、標準的な評価額では実際の利用価値に見合わない場合があります。そのような場合は、以下の「補正率」を適用して評価額を減額(または加算)する必要があります。

主な補正率

奥行価格補正

奥行き距離が短い、または長い場合に減額する補正です。

間口狭小補正

間口(道路に面している長さ)が短い場合に減額する補正です。

奥行長大補正

奥行き距離が間口距離に比べて著しく長い(いわゆるウナギの寝床状)場合に減額する補正です。奥行きが長いほど減額割合が大きくなります。

不整形地補正

土地の形がいびつな場合に減額する補正です。

規模格差補正

土地の面積が大きすぎる場合に減額する補正です。

側方路線影響加算・二方路線影響加算

宅地が正面だけでなく、側方(横)や裏側など、複数の道路に面している場合に評価額を加算する規定です。相続税の土地評価の規定は減額が多い中で、加算される数少ない例です。

これらの補正は、土地の状況や地区区分に応じて適用されるかどうかが決まり、適用される場合の補正率も異なります。

8. 専門家への相談が必要な理由

相続税申告において、土地の評価は非常に頻繁に登場するため、路線価の理解はほぼ必須と言えます。しかし、実際に土地の評価を行う際には、単に路線価と面積を掛けるだけでなく、土地の状況を正確に把握し、適切な補正率を適用したり、各種特例(小規模宅地等の特例など)を検討したりする必要があります。

複雑な評価が必要となるケース

特に、土地の形が悪かったり、複数の道路に面していたり、行き止まりの道路に面しているなど、標準的な条件から外れる土地の評価は非常に複雑です。適用できる減額補正をどれだけ正確に見極められるかが、税理士の腕の見せどころとも言われています。

自己評価のリスク

相続税に不慣れな方がご自身で正確な土地評価を行うのは非常に難しく、評価額を過大に計算してしまったり、適用できる減額を見落としてしまったりするリスクがあります。

専門家に依頼するメリット

相続税申告を専門的に行っている税理士であれば、土地の状況を詳しく調査し、適切な路線価や補正率を適用することで、適正な評価額を算出し、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

相続財産に土地がある場合、相続税に強い我々にお任せください。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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