「税理士はいらない」って本当?

2025年5月27日
Posted in コラム
2025年5月27日 管理人

第1章|帳簿に追われた夜——あるフリーランスの現実

「今年こそ、ちゃんと確定申告しようと思ってたんです。でも気づけばまた、期限ギリギリになっていて……」

これは、昨年の2月に初めてご相談を受けた、あるWebデザイナーの方の言葉です。彼はフリーランスとして独立して3年目。仕事は順調に増えていましたが、毎年、申告の時期になると胃が痛くなる思いをしていました。

会計ソフトは使っている。レシートも取ってある。ネットで調べながら入力もしている。——それでも、「これで合ってるのか不安で仕方がない」というのが本音でした。

この話は、特別なものではありません。経理や税務に時間を取られることで、本業に集中できず、精神的にも疲弊してしまう個人事業主は少なくありません。

一方で、こうした悩みに直面しながらも、「税理士に依頼するのはまだ早い気がする」と感じている方も多いようです。

果たして、フリーランスや個人事業主にとって税理士は「本当に必要ない」のでしょうか?


第2章|「税理士はいらない」という考え方が広がった理由

ここ数年、「税理士はいらない」という声を聞く機会が増えました。その背景には、大きく5つの変化があります。

  • クラウド会計ソフトの進化
     フリーやマネーフォワードなどの登場により、帳簿作成や確定申告書の作成が格段に楽になりました。

  • ネット情報の充実
     国税庁の公式サイト、SNS、YouTube、オンライン講座——税務情報へのアクセスは、以前よりもずっと身近になっています。

  • 無料相談の活用
     青色申告会や税務署では、確定申告時期に無料相談を実施しています。

  • 事業規模のミニマム化
     副業やスモールビジネスが増えたことで、取引件数が少なく、会計処理もシンプルなケースが多くなっています。

  • 「お金の知識」を学びたいという自立志向
     お金の流れを自分で把握したい、自分で学びたいという気持ちも、税理士不要論を後押ししています。

これらは確かに正しい側面があります。「いらない」と言いたくなる理由も、もっともです。


第3章|分岐点——「やっぱり限界かも」と思った瞬間

話を戻しましょう。

先ほどのWebデザイナーの方は、その年、売上が前年比で1.5倍になりました。案件が増え、外注も使い始め、経費も増えていったのです。

そして申告期限の1週間前、彼はこうつぶやきました。

「取引が複雑になって、もう何が経費で落とせるのか分からない。あと、消費税のことって……これ、どうなるんですか?」

この「分岐点」は、多くの事業主に共通するタイミングです。

  • 売上が1,000万円を超えた(2年後から消費税の課税事業者)
  • 法人成りを検討している
  • 融資を受けたいと考えている
  • 税務署から「お尋ね」が届いた
  • 本業に集中できなくなってきた

このようなフェーズに入ったとき、「税理士に頼る」ことは、単なる外注ではなく、事業を守るための選択になります。


第4章|「記帳を任せたい」は通じない? 税理士との正しい役割分担

「記帳って全部やってもらえますか?」というご相談をいただくこともあります。

しかし、私たちは基本的に記帳代行は行っていません。なぜなら、経営者ご自身が日々の数字に触れることこそ、経営の感度を養う第一歩だからです。

私たちのサポートは、「自分で記帳できる仕組み」を整えるところにあります。

  • クラウド会計ソフトの導入・初期設定支援

  • 勘定科目や取引内容に関するアドバイス

  • 記帳の内容に対するレビュー・助言

  • 確定申告や決算のチェックおよび作成支援

経営者の意思決定に必要なのは、記帳を「やってもらう」ことではなく、「理解する」ことです。そのためにこそ、私たちは伴走します。


第5章|税理士に依頼することで得られる“自由”

税理士に依頼することで得られるのは、書類の正確さや節税だけではありません。

それは、「経営者としての自由」です。

  • 記帳の正確性と、確認ができる安心感
  • 「これで大丈夫?」という不安の軽減
  • 融資や調査、節税に関する的確なアドバイス
  • 経営に集中できる時間と精神的ゆとり

「専門家と一緒に数字を見る」というだけで、驚くほど決算書が“自分の言葉”になっていきます。

tax_advisor_freedom_benefits (1)


第6章|それでも、自分でやりたい方へ——自力で対応する選択肢

  • オンライン講座や教材で税務知識を学ぶ

  • クラウド会計ソフトを最大限活用する

  • 税務署や自治体の無料相談窓口を利用する

  • 国税庁や専門メディアでの情報収集

経理を自分で行うという選択は、立派なスタンスです。ただし、「今は大丈夫」でも、「将来もずっと大丈夫か?」は別問題。だからこそ、次の章は重要です。


第7章|税理士は“いつか”ではなく“必要になったときにすぐ相談できる存在”に

税理士に依頼するタイミングを見極めるポイントは、以下のような“兆し”が出たときです。

  • 売上や取引量が増えてきた
  • 税金が増え始め、申告に不安がある
  • 融資・法人化・人材雇用を考え始めた
  • 本業に集中する時間が減ってきた

そのときに初めて税理士を探すのではなく、「いざというとき、すぐに相談できる関係性」を持っておくことが、経営の安心につながります。

tax_advisor_timing_signs


まとめ|「いらない」は“今”だけかもしれない。未来の選択肢を準備しよう

税理士は「贅沢品」でも「保険」でもありません。
経営の視界をクリアにする、“必要なときに頼れる味方”です。

税理士が必要かどうかは、事業のフェーズによって変わります。今は必要なくても、将来のために一度、話をしてみる。それだけでも、新しい視点が得られるかもしれません。

法人のお客様のページ

相続税の専門サイト

お問合せ

飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

相続辞典ボタン

会社の経営辞典

, , ,