税理士飯野明宏

税理士飯野明宏の執筆したコラム(blog)です。

15 5月 2025

中小企業のための会計ルール:中小会計要領の基本的な考え方

目次 はじめに|本要領の目的と学び方 1 適切な記帳の重要性 2 企業会計原則との関係と留意点 3 継続性の原則:処理方法は一貫して 4 本要領で扱われていない処理への対応 まとめ|本要領を活用するための基本姿勢 はじめに|本要領の目的と学び方 「中小企業の会計に関する基本要領」(本要領)は、中小企業が計算書類等を作成する際に参照するための会計処理や注記等を示すものです。本要領を利用するにあたっては、単に個別の処理方法を知るだけでなく、その根底にある基本的な考え方を理解することが重要です。 今回は、本要領の「総論」で示されている、会計の基本的な考え方や利用上の留意事項をご紹介します。 1 適切な記帳の重要性 本要領を利用するにあたっては、適切な記帳が前提とされています。経営者が自社の経営状況を適切に把握するためにも、記帳は非常に重要です。 記帳はすべての取引について、次の原則に従って行う必要があります。 正規の簿記の原則に則ること。 適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成すること。…

15 5月 2025

中小企業の会計、もっとシンプルに!中小会計要領とは?

目次 はじめに|中小企業のための会計ルール 1 本要領が作られた背景と目的 2 本要領の利用が想定される会社 3 他の会計基準との関係 はじめに|中小企業のための会計ルール 中小企業経営者の皆さん、日々の業務で会計処理に難しさを感じていませんか?日本の会計基準は国際的な流れを受けて複雑化する傾向がありますが、中小企業にはその実態に即した会計ルールとして「中小企業の会計に関する基本要領」(以下「本要領」)があります。今回は、この本要領がなぜ作られ、どのような会社を対象としているのか、その概要をご紹介します。 1 本要領が作られた背景と目的 本要領が策定された背景には、主に中小企業の次のような実態への配慮があります。 まず、資金調達の方法についてです。中小企業は新株発行や社債発行といった資本市場からの調達はほとんど行っておらず、地域金融機関やメガバンクからの借入れが中心となっています。 また、利害関係者が限定されていることも特徴です。所有と経営が一致しているケースが多く、株式に譲渡制限が付されているため、利害関係者は主に取引金融機関、主要取引先、既存株主などに限られます。 さらに、多くの企業では税務申告が計算書類等を作成する主な目的となっており、法人税法で定める処理を意識した会計が行われています。 そして、経理体制も限られており、経理担当者の人数が少ない企業が多いという点も挙げられます。 このような実態を踏まえ、本要領は次のような考え方に立って作成されました。 まず、経営者が自社の経営状況を把握しやすいように、理解しやすく、経営に役立つ会計であることが求められています。 また、金融機関や取引先、株主などの利害関係者への情報提供にも資する内容となっています。…

15 5月 2025

インボイスがなくても控除できる?免税事業者からの仕入れの経過措置

目次 1 原則ルール:インボイスがなければ仕入税額控除はできない 2 ただし、経過措置がある!【6年間限定】 3 この制度の名前は「経過措置(段階的控除)」!誤解されがちな制度名に注意 4 これとは別の「少額特例」とは何が違うの? 5 仕入税額控除の実務例(段階的控除の場合) まとめ|インボイスがない場合でも救済措置はある。ただし段階的に消える。 こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。 インボイス制度の開始により、仕入税額控除を受けるには原則として「帳簿+インボイス(適格請求書)」の保存が必要となりました。 しかし、免税事業者(インボイスを発行できない事業者)との取引については、「控除がゼロになるのでは?」「80%は控除できると聞いたけど?」といった不安や誤解の声がよく寄せられます。 今回は、免税事業者からの仕入れに対する仕入税額控除の可否と、正しい経過措置の内容について整理してご説明します。 1 原則ルール:インボイスがなければ仕入税額控除はできない まず大前提として、令和5年10月1日以降、適格請求書発行事業者でない者(=免税事業者等)からの仕入れについては、原則として仕入税額控除はできません。 なぜなら、適格請求書(インボイス)を発行できないため、控除要件を満たさないからです。…

15 5月 2025

従業員旅費・交通費の仕入税額控除はインボイス不要?

目次 1 インボイス不要!帳簿だけで控除できる「従業員旅費等」の特例 2 従業員が立替払いした場合は原則通り 3 タクシー利用時はどう処理する? 4 内定者や採用面接者への交通費は? まとめ|「インボイス不要」かどうかは目的と支出先で判断 こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。 インボイス制度が始まり、消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として「帳簿+適格請求書等の保存」が必要です。 しかし、すべての経費について請求書を取り寄せるのは、現実的に難しい場面もあります。特に、従業員への出張旅費や通勤手当のような経費精算では、「どこまで請求書が必要なの?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。 今回は、従業員旅費等に関するインボイス制度の特例と、立替払い・タクシーチケット・内定者交通費の取扱いについて詳しく解説します。 1 インボイス不要!帳簿だけで控除できる「従業員旅費等」の特例 次のような従業員に支払う通常の経費は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。 ✅ 帳簿保存のみでOKな経費 出張旅費…

15 5月 2025

媒介者交付特例とは?代理交付との違いと委託販売におけるインボイス対応

目次 1 媒介者交付特例とは?基本の仕組み 2 媒介者交付特例の適用要件 3 複数の委託者がいる場合の実務対応 4 買手が委託者にインボイスを求めたら? まとめ|媒介者交付特例を活用して、三者間取引もスムーズに対応 こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。 インボイス制度が始まり、適格請求書の交付・保存が税務処理の基本となりました。しかし、商品の販売形態が「委託販売」や「代理販売」のような三者間取引の場合、 ■「誰が誰に対してインボイスを交付すべきか?」 ■「委託者が適格請求書を交付しないといけないの?」 といった疑問をお持ちの事業者様も多いのではないでしょうか。 実は、そうしたケースでは「媒介者交付特例」を利用することで、受託者(仲介者)側がインボイスを交付することが可能です。 今回はこの媒介者交付特例について、実務対応を交えながら解説します。 1 媒介者交付特例とは?代理交付との違いと基本の仕組み 通常、商品の販売者=課税資産の譲渡者である委託者が、購入者に対してインボイスを交付する義務があります。…

15 5月 2025

インボイス制度における仕入税額控除の例外 帳簿のみでOK?

目次 1 インボイスなしでも帳簿保存のみで控除できる取引一覧 2 帳簿のみで控除を受けるための記載事項とは? 3 少額特例(1万円未満)も帳簿のみでOK【経過措置】 4 電子データでインボイスを受け取った場合の保存方法は? まとめ|「帳簿だけで仕入税額控除」も制度の一部!正確な記録がカギ こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。 インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、仕入税額控除の適用には原則「帳簿+適格請求書等」の保存が必要です。 しかし、すべての取引に請求書を求めるのは現実的ではない場合もあります。そのため、インボイス制度では一部の取引において、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例が設けられています。 本記事では、 ■帳簿保存のみで控除可能な取引の一覧 ■帳簿に記載すべき内容 ■電子請求書を保存する場合のルール について、実務に役立つよう解説します。 1 インボイスなしでも帳簿保存のみで控除できる取引一覧…