法人税

法人税に関するコラム(blog)です。

11 5月 2025

法人税法における固定資産と減価償却の基本をやさしく解説

法人税法における固定資産と減価償却の基本をやさしく解説 こんにちは、税理士の飯野明宏です。今回は、法人税を理解するうえで欠かせない「固定資産」と「減価償却」について、基礎から丁寧に解説していきます。企業活動において、資産の取得・管理・償却は、会計と税務の両面で非常に重要な論点です。この記事では、法人税法上の位置づけや、実務に役立つポイントまで網羅的にご紹介します。 目次 1. 固定資産の定義とその範囲 2. 減価償却資産とは? 3. 取得価額の考え方 4. 償却方法と法人税法上の取扱い 5. 少額資産・使用可能期間1年未満の資産の取り扱い 6. 税務調整における減価償却 第1章|固定資産の定義とその範囲 法人税法において「固定資産」とは、棚卸資産、有価証券、暗号資産(資金決済法第2条第5項に規定)、繰延資産を除いた資産を指します。特定の目的のために継続的に事業に利用される資産が該当します。 例: 事業で使用する建物、車両、機械設備など 同じ種類の物でも、保有目的によって「棚卸資産」となるか「固定資産」となるかが異なります。…

10 5月 2025

法人税における「損金の額」とは?会計との違い・損金不算入の代表例

法人税における「損金の額」とは?会計との違い・損金不算入の代表例 法人税は、益金から損金を差し引いた所得金額に課税されますが、この「損金」とは、単なる会計上の費用や損失とは限りません。 この記事では、法人税法における損金の定義と計算方法、会計との違い、そして実務で頻出する損金不算入項目について解説します。 https://iinotax.com/blog/7382/ 目次 第1章|損金の額とは?法人税法の基本定義 第2章|企業会計と法人税法の目的の違い 第3章|損金算入・不算入に関する代表的な税務処理項目 第4章|税務調整と申告書別表四の活用 第1章|損金の額とは?法人税法の基本定義 法人税法第22条第3項では、損金の額を次の3つに分類しています。 ① 売上原価・完成工事原価などの原価の額 ② 販売費や一般管理費などの費用(償却費を含む) ③ 損失の額 このうち「費用」や「損失」は、企業会計上の費用認識と一致するものもあれば、法人税法上の独自ルール(=「別段の定め」)によって損金に含まれないものもあります。 第2章|企業会計と法人税法の目的の違い 企業会計の目的は、企業の財政状態や業績を投資家などに正しく伝えることです。一方で、法人税法の目的は「課税の公平性」を実現し、適正な税負担を確保することです。…

10 5月 2025

法人税における「益金の額」とは?収益との違いと税務調整の仕組み

法人税における「益金の額」とは?収益との違いと税務調整の仕組み 会計上の「収益」と税法上の「益金」という2つがあります。これらは似て非なるものであり、法人税の計算上は「益金の額」が重要な意味を持ちます。 この記事では、法人税法における「益金の額」の定義と範囲、収益との違い、そして税務調整や別表四の役割について詳しく解説します。 目次 第1章|「益金の額」とは?法人税法における基本定義 第2章|企業会計の「収益」との違いとは? 第3章|収益の計上時期と法人税法のルール 第4章|益金不算入の具体例とその趣旨 第5章|圧縮記帳という税法独自の調整制度 第6章|税務調整と申告書別表四の役割 第1章|「益金の額」とは?法人税法における基本定義 法人税法第22条第2項では、課税標準となる所得金額は「益金の額」から「損金の額」を控除して算出するものと規定されています。 https://iinotax.com/blog/7382/ 1-1. 益金とは「収益のうち課税対象になるもの」 益金の額とは、基本的には資本等取引以外の取引に伴って生じた収益を指します。具体的には、以下のような収益が該当します。 商品・製品等の販売収益 固定資産や有価証券等の譲渡による収益 請負契約に基づく役務の提供収益 その他の資本等取引に該当しない収益全般…

10 5月 2025

法人税の税務調査とは?調査対象・頻度・指摘ポイントと備え方

法人税の税務調査とは?調査対象・頻度・指摘ポイントと備え方 目次 第1章|税務調査とは何か?その本質と種類を知る 第2章|法人税における税務調査の実態とポイント 第3章|税務調査が来る前にできる事前準備 第4章|税務調査を受けたときの対応のコツ 第5章|まとめ|法人税の税務調査は準備と対応がカギ 第1章|税務調査とは何か?その本質と種類を知る 税務調査とは、税務署が申告された税額の適正性を確認するために実施する調査のことです。税目は法人税、所得税、消費税、そして相続税など多岐にわたります。 通常は任意調査であり、きちんと申告していても対象になることがあります。 第2章|法人税における税務調査の実態とポイント 法人税の税務調査は、企業が適切に所得を計算し、税金を正しく納めているかを確認するために実施されます。調査の対象となる法人は、売上規模や業種にかかわらず広範囲に及びます。 2-1. 調査件数と調査率 国税庁のデータによると、令和元事務年度の法人税の申告件数は約288万件、そのうち実地調査が行われたのは約9万件で、調査率は約3.1%です。これは、相続税と比べて一見低いようにも見えますが、継続的な監視の中でランダムではなく「選定された法人」に集中して行われているのが特徴です。 特に、黒字決算が続いている法人、役員報酬が高額な法人、急成長しているベンチャー企業などは、調査対象になりやすい傾向にあります。 2-2. 調査されやすい項目 売上の除外や先送り:現金売上の除外や期ズレ計上がないか 架空経費・水増し経費:外注費、広告費、福利厚生費などの内容確認…

10 5月 2025

法人税における交際費とは?損金不算入のルールと限度額、会議費との違い

法人税における交際費とは?損金不算入のルールと限度額、会議費との違い 目次 第1章|交際費等制度の趣旨とは? 第2章|交際費等とは何か?【定義と範囲】 第3章|交際費と会議費・広告宣伝費との違い 第4章|交際費の損金算入限度額と計算方法 まとめ|交際費は「実態」で判断し、記録と分類を丁寧に 第1章|交際費等制度の趣旨とは? 企業が得意先や取引先との関係を円滑に進めるために支出する「交際費」。これは企業会計上では全額が費用として計上されますが、法人税法では冗費性の抑制と公正な取引の確保という観点から、全額が損金に算入されるわけではありません。 この制度は、昭和の時代から続く「過度な接待・贈答を抑制する」ための税制措置であり、平成以降は「正常な価格形成の促進」という側面も加わっています。 第2章|交際費等とは何か?【定義と範囲】 交際費等とは、次のように定義されます。 法人が、事業に関係のある者に対し、接待・供応・慰安・贈答等を行うために支出する費用(措法61の4⑥) 主な具体例(交際費に該当) 得意先や仕入先との飲食代 ゴルフや観劇などの接待費用 慶弔費、記念品、贈答品 社外向けの接待に使う会議室代 ポイント 名目や勘定科目に関係なく、実態で判断…

10 5月 2025

法人税における青色申告制度とは?|承認手続・特典・注意点

法人税における青色申告制度とは?|承認手続・特典・注意点 第1章|青色申告制度とは何か? 法人税における「青色申告制度」は、帳簿組織を整え、正確に取引を記録している法人に対して、税務上の優遇措置を認める制度です。これは、適正な申告と納税を促進するために設けられた制度であり、法人が自主的に税務申告を行う仕組み(申告納税制度)を支える重要な制度の一つです。 この制度を利用すると、欠損金の繰越控除や、特別償却など、多くのメリットがあります。 第2章|青色申告の承認を受けるには?【提出要件と期限】 法人が青色申告書を提出するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。 2-1.帳簿書類の整備 総勘定元帳、仕訳帳などを整然と明瞭に作成・保存 決算書(貸借対照表・損益計算書)、棚卸表、取引書類(契約書・請求書など)の保存(原則7年間、欠損金関係は10年間) 2-2.所轄税務署への「承認申請書」の提出 申請書は、青色申告をしたい事業年度開始の日の前日までに提出 新設法人の場合は、設立の日以後3か月以内か、最初の事業年度終了の日の前日、いずれか早い日までに提出 第3章|みなし承認・却下・取消の仕組み 3-1.みなし承認 申請後、税務署から承認も却下もされなかった場合、事業年度終了日(または開始後6か月を経過した日)に承認があったものとみなされます。 3-2.却下される場合 税務署長は以下のような場合、青色申告の承認を却下することができます。 帳簿書類が整備されていない 虚偽の記帳・隠蔽がある 取消や取止めから1年以内に再申請された…