目次 1 特別受益とは?その意味と重要性 2 どんなものが特別受益になる? 3 特別受益があるときの相続分の計算方法 4 遺留分との関係と持ち戻し免除 こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。 相続の現場では、被相続人から「生前に家を建ててもらった」「結婚資金を援助してもらった」など、特定の相続人だけが利益を得ていたというケースがあります。これが「特別受益」の問題です。 特別受益を正しく理解しておかないと、遺産分割協議が不公平になり、相続トラブル(争族)に発展する恐れもあります。本記事では、特別受益の基礎知識から計算方法、トラブル防止の対策まで、実務経験に基づいて分かりやすく解説します。 1 特別受益とは?その意味と重要性 特別受益とは、法定相続人の中で、被相続人から遺言や生前贈与により「特別な利益」を受けた人がいる場合に、その利益を公平な相続に反映させるための制度です。 例えば、長男だけが住宅購入資金1,000万円を生前に受け取っていた場合、それを考慮せずに相続すると、他の相続人から「不公平だ」と感じられてしまいます。そこで、その1,000万円を一度遺産に「持ち戻す」ことで、相続分を調整します。特別受益は相続税の対象ではないため、この持ち戻しは相続税に影響を与えることは、基本的にありません。あくまで、公平な相続分を計算するための概念です。 法的根拠と要件 特別受益は民法903条に定められた制度で、以下の要件を満たす必要があります: ・相続人が被相続人から受けた利益であること ・「遺贈」または「婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与」であること…