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22 6月 2025

倍率地域にある土地の評価

目次 1. 倍率方式とは? 2. 倍率評価の計算基礎となる「固定資産税評価額」 3. 倍率方式における土地評価の流れ 4. 倍率評価の「落とし穴」と注意点 5. 倍率地域で相続税評価額を減額できるケース 6. 倍率方式評価で気をつけるべき期限とタイミング 7. まとめ こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。 相続税を計算する際、土地の評価は非常に重要なプロセスです。土地の相続税評価額は、その土地が「路線価地域」にあるか、「倍率地域」にあるかによって算出方法が異なります。都市部では路線価を基に評価されますが、地方や郊外など路線価が設定されていない地域では「倍率方式」が用いられます。 今回は、一見シンプルに見える「倍率方式」について、その詳細と注意点を深掘りしていきます。 倍率方式は路線価方式と比べて計算が簡単に見えますが、実際には多くの落とし穴があり、適切な評価を行うためには細心の注意が必要です。特に、固定資産税評価額の確認方法や実際の土地利用状況の把握が重要になります。 1 倍率方式とは? 倍率方式とは、その土地の固定資産税評価額に、国税局長が定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式です。 この倍率は、地価事情が類似する地域ごとに、土地の売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士による鑑定評価額、精通者意見価格などを基に、その地域の実情に即した評価額となるように国税局長が毎年定めています。評価倍率表は、地域と地目ごとの評価倍率をまとめたもので、国税庁のウェブサイトや管轄の税務署で確認できます。 例えば、固定資産税評価額が500万円の土地に対し、評価倍率が1.2であれば、相続税評価額は600万円となります。 2 倍率評価の計算基礎となる「固定資産税評価額」 土地課税台帳に登録されている基準年度の価格などを指します。この評価額は、市区町村等から送付される固定資産税課税明細書に記載されている「価格(評価額)」欄で確認できます。紛失した場合は、名寄帳、固定資産税課税台帳、固定資産評価証明書で把握することが可能です。 3 倍率方式における土地評価の流れ 倍率地域における土地評価は、以下の4ステップで進めます。 ステップ1: 評価方式を特定する まず、財産評価基準書を確認し、対象地域が路線価方式か倍率方式かを特定します。路線価と評価倍率の双方が設定されている地域はありませんが、評価対象地が境界に位置する場合は注意が必要です。 路線価方式について > ステップ2: 固定資産税評価額を確認する 相続が開始した年度(1月1日時点)の固定資産税評価額を確認します。評価額は毎年4月から5月にかけて送付される課税明細書で確認でき、通常3年ごとに評価が見直されます。 ステップ3: 評価倍率表を確認する 国税局が公表する「財産評価基準書」にアクセスし、該当する都道府県、市区町村を選択して評価倍率表を確認します。同じ地目でも、地域や用途によって適用される倍率が異なる場合があります。 ステップ4: 相続税評価額を計算する 確認した固定資産税評価額に、評価倍率表で特定した倍率を乗じて評価額を算出します。 【具体的な計算例】 固定資産税評価額:800万円 評価倍率:1.1(宅地) 相続税評価額 = 800万円 × 1.1 = 880万円 ただし、現況地積と登記地積が異なる場合: 固定資産税評価額:800万円 登記地積:200㎡ 実際の面積:220㎡ 評価倍率:1.1 まず適正な固定資産税評価額を算出: 800万円 × 220㎡ ÷ 200㎡ = 880万円 次に相続税評価額を算出: 880万円 × 1.1 = 968万円 情報元:国税庁 倍率方式による土地の評価 4 倍率評価の「落とし穴」と注意点 倍率方式はシンプルな計算式に見えますが、路線価方式よりも検討すべき事項が多いとされています。特に以下の2点には注意が必要です。 (1) 固定資産税評価額が2つある? 登記簿謄本では原則として一つの土地に一種類の地目しか設定できません。しかし、固定資産税評価額が記載されている固定資産税評価証明書や名寄帳上は、同じ地番の土地で地目が2つ以上設定されていることがあります。 これは、登記簿謄本が所有者等の権利を明らかにすることを目的としているのに対し、固定資産税評価証明書等は適正に固定資産税を徴収することを目的としているためです。市区町村では、土地の現在の使用状況に応じて地目を把握し、地目ごとに固定資産税を課税するため、このような状況が生じます。 例えば、同じ地番の土地が「宅地」と「農地」に分かれて評価されている場合、それぞれの地目の価格に、それぞれの地目の倍率を乗じて評価額を算出することになります。 (2) 実際の面積と固定資産税評価証明書等の地積が異なる 実際の土地の面積(現況地積)が、固定資産税評価証明書等に記載されている地積(登記地積)と異なる場合があります。これは「縄延び」や「縄縮み」と呼ばれる現象で、固定資産税評価額は登記簿上の面積で算定されているために起こります。 この場合、単に固定資産税評価額に倍率を乗じるだけでは適正な評価額を算定できません。そのため、以下の算式によって適正な固定資産税評価額を算出した上で、相続税評価額を算定する必要があります。 その土地の固定資産税評価額 × 実際の面積 ÷ 固定資産税評価証明書等の地積 したがって、相続開始時点での土地の実際の利用状況(地目)と実際の面積をしっかり確認することが重要です。課税地目と実際の現況が異なる場合、相続開始時点の地目に基づいて評価額を算出します。また、登記上の面積と実際の面積が大きく異なる場合は、測量を行い正確な面積を確認することが大切です。 (3) 相続開始時点での地目と固定資産税評価額の地目が異なる場合 相続開始時点で土地の利用状況が変わっている場合、固定資産税評価額の地目と実際の地目が異なることがあります。この場合、相続開始時点の現況地目に基づいて評価を行う必要があります。 例えば、固定資産税評価額では「農地」として評価されているが、実際には「宅地」として利用されている場合、宅地としての倍率を適用することになります。 情報元:国税庁 倍率方式によって評価する土地の実際の面積が台帳地積と異なる場合の取扱い 5 倍率地域で相続税評価額を減額できるケース 倍率地域であっても、特定の条件を満たす土地では相続税評価額を減額できる場合があります。主なケースは以下の3つです。…

10 6月 2025

【相続税・財産評価】「路線価」とは?土地評価の基本

目次 1. 路線価とは何か 2. 土地の「一物四価」について 3. 路線価の調べ方 4. 路線価図の見方 5. 路線価を使った土地評価の基本 6. 評価額を左右する「補正率」について 7. 専門家への相談が必要な理由 こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。 相続が発生し、遺産の中に土地が含まれている場合、相続税の申告においてその土地の評価を行う必要があります。土地の評価額を算出する際に、まず最初に確認するのが「路線価」です。今回は、相続税申告で非常に重要な「路線価」について、その意味や調べ方、評価の基本を解説します。 1. 路線価とは何か 路線価とは、全国の市街地の道路に設定されている、1㎡あたりの土地の価格のことです。相続税や贈与税の計算のために土地を評価する場合に、この路線価を使用します。 リンク 国税庁 路線価図・評価倍率表 路線価は、国税庁によって毎年7月上旬に公表され、国税庁のホームページで確認できます。過去7年分までの路線価も、国税庁のホームページで調べることが可能です。 2. 土地の「一物四価」について 土地には「一物四価」と言われるように、一つの土地に4つの価格が存在します。 ①公示地価 土地の売買の参考にされる指標で、毎年3月下旬に公表されます。 ②実勢価格 実際に土地が売買される際の価格です。 ③相続税路線価 相続税・贈与税の土地評価に使用される価格です。公示価格の8割程度と言われています。 ④固定資産税評価額 固定資産税の計算に使用される価格です。公示価格の7割程度と言われています。 これらの価格はそれぞれ異なる目的で使われ、金額も異なります。 4. 路線価の調べ方 路線価は、主に以下の方法で調べることができます。 ①国税庁ホームページ 「路線価図・評価倍率表」のページで、評価したい土地の都道府県を選択し、市区町村・地名を選択して路線価図を確認します。これが最も一般的な方法です。 リンク 国税庁 路線価図・評価倍率表 ②全国地価マップ 一般財団法人 資産評価システム研究センターが運営するサイトで、固定資産税路線価だけでなく相続税路線価も調べられます。 リンク 全国地価マップ ③最寄りの税務署 税務署に路線価図が備え置かれています。 5. 路線価図の見方 路線価図を見ると、道路上に数字とアルファベットが書かれています。 数字の意味 その道路に面した土地の、1㎡あたりの路線価を表しています。単位は千円です。例えば「70E」とあれば、1㎡あたり70,000円(70千円)という意味です。 末尾のアルファベット 借地権割合を表しています。これは、土地を借りている人の借地権を評価する際に使用されます。例えば「E」なら借地権割合は50%です。 数字の周りの記号 土地の地区区分を示しています。これにより、後述する補正率が変わってきます。 6. 路線価を使った土地評価の基本 路線価が設定されている土地の評価額は、原則として「路線価 × 土地の面積(地積)」で計算します。 例えば、路線価が70,000円/㎡の道路に面した100㎡の土地であれば、基本的な評価額は 70,000円 × 100㎡ = 700万円 となります。 ただし、これはあくまで基本的な計算方法です。実際の土地は、標準的な土地の条件(中央部、単独接面、標準的な形状など)を満たさないことがほとんどです。 7. 評価額を左右する「補正率」について 路線価は標準的な土地を前提に設定されています。しかし、土地の形が悪かったり、大きすぎたりすると、標準的な評価額では実際の利用価値に見合わない場合があります。そのような場合は、以下の「補正率」を適用して評価額を減額(または加算)する必要があります。 主な補正率 奥行価格補正 奥行き距離が短い、または長い場合に減額する補正です。 間口狭小補正 間口(道路に面している長さ)が短い場合に減額する補正です。 奥行長大補正 奥行き距離が間口距離に比べて著しく長い(いわゆるウナギの寝床状)場合に減額する補正です。奥行きが長いほど減額割合が大きくなります。 不整形地補正 土地の形がいびつな場合に減額する補正です。 規模格差補正 土地の面積が大きすぎる場合に減額する補正です。 側方路線影響加算・二方路線影響加算 宅地が正面だけでなく、側方(横)や裏側など、複数の道路に面している場合に評価額を加算する規定です。相続税の土地評価の規定は減額が多い中で、加算される数少ない例です。 これらの補正は、土地の状況や地区区分に応じて適用されるかどうかが決まり、適用される場合の補正率も異なります。 8. 専門家への相談が必要な理由 相続税申告において、土地の評価は非常に頻繁に登場するため、路線価の理解はほぼ必須と言えます。しかし、実際に土地の評価を行う際には、単に路線価と面積を掛けるだけでなく、土地の状況を正確に把握し、適切な補正率を適用したり、各種特例(小規模宅地等の特例など)を検討したりする必要があります。 複雑な評価が必要となるケース 特に、土地の形が悪かったり、複数の道路に面していたり、行き止まりの道路に面しているなど、標準的な条件から外れる土地の評価は非常に複雑です。適用できる減額補正をどれだけ正確に見極められるかが、税理士の腕の見せどころとも言われています。 自己評価のリスク 相続税に不慣れな方がご自身で正確な土地評価を行うのは非常に難しく、評価額を過大に計算してしまったり、適用できる減額を見落としてしまったりするリスクがあります。 専門家に依頼するメリット 相続税申告を専門的に行っている税理士であれば、土地の状況を詳しく調査し、適切な路線価や補正率を適用することで、適正な評価額を算出し、相続税の負担を軽減できる可能性があります。 相続財産に土地がある場合、相続税に強い我々にお任せください。 この記事を書いた税理士 飯野明宏税理士公認会計士事務所 代表税理士 飯野 明宏 東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号…

03 6月 2025

相続税の専門家の見分け方

目次 1. なぜ「相続税の専門院」を始めたのか? 2. そもそも「相続」とは何か? 3. 相続税の専門家とは? 4. 実務で磨いた「相続税の専門性」 5. 相続税のプロの見分け方 6. 相続の不安を安心に変えるために 7. おわりに|新富士駅前から、安心の相続を 富士市・富士宮市を中心に 相続税申告や生前対策のサポートを行っている、税理士・公認会計士の飯野明宏です。 このたび、私が代表を務める「飯野明宏税理士公認会計士事務所」は、新たに【新富士駅前 相続税の専門院】というサービスを立ち上げました。 より専門性の高い支援を提供することで、「相続」という一大イベントに直面する地域の皆さまに、安心と信頼をお届けするための体制強化です。 本記事では、サービス立ち上げの背景や、相続税の専門家とはどんな存在か、そして「相続」とは何かをわかりやすくお話ししながら、相続税のプロを見分けるための視点についてもご紹介します。 税理士の選び方について > 1 なぜ「相続税の専門院」を始めたのか? 相続税や譲渡所得といった「資産税」に強みを持つ私ですが、これまで地元・富士市や富士宮市において、その専門性を十分に提供できていない現実がありました。都会の一流事務所で培った知識と経験を、地元の皆さまに活かしきれていなかったのです。 「もっと皆様のお役に立ちたい!」 そう強く感じたことが、今回のサービス立ち上げの原点です。 相続税は、単なる数字合わせの税務ではありません。故人の想いを受け継ぎ、遺されたご家族の将来を守るための“人生に関わる”税務です。高度な法的知識、複雑な財産評価、そして人間関係への配慮が求められる非常に繊細な領域です。 この相続税業務に本気で取り組むためには、「専門院」として、地域に根差した中にも、専門性とスピードを両立する組織が必要でした。それが【新富士駅前 相続税の専門院】なのです。 2 そもそも「相続」とは何か? 相続とは、一言でいえば「亡くなった方の財産を、遺された方が引き継ぐ」ことです。 法律的には、民法に定められています。民法第5編「相続」(第882条以降)において、誰が相続人になれるのか、どのように財産を分けるのか、遺言がある場合はどう取り扱うのか、といったルールが細かく規定されています。 しかし、一般の方が相続を経験するのは、一生に2〜3回がせいぜいです。そのたびに一から学び直すことになり、精神的・経済的な負担も大きいものです。 だからこそ、「専門家の支援」が必要なのです。 3 相続税の専門家とは? 相続税を扱う税理士の中でも、真に専門性を有する人材はごく一部です。 税理士試験には「相続税法」という科目がありますが、それはあくまで税務上の論点に過ぎません。相続の全体像を理解するには、民法や不動産評価、判例知識など、幅広い分野の学習が必要です。 税理士として、そして相続を扱う専門家として、法的思考力は不可欠です。なぜなら、相続では税法だけでなく、民法や登記法、不動産の実務まで絡む場面が多いからです。机上の知識だけでは、真の相続対策はできません。 4 実務で磨いた「相続税の専門性」 私は以前、東京にある資産税専門の「東京シティ税理士事務所」で実務を積みました。ここで私は、相続に関する複雑な申告業務や調査対応を数多く経験しました。 特に印象的だったのは、隣に座っていた先輩税理士の存在です。彼は司法試験に挫折したものの、その思考力を武器に、税理士試験を軽々と突破。まさに「法と税の両輪」を持つプロフェッショナルでした。 そんな中で、「お前は、そんなことも分からないのか?」と何度も叱咤されながら、悔しさをバネに学び続けました。あの厳しい環境があったからこそ、今の自分の基礎があると確信しています。 5 相続税のプロの見分け方 では、どうすれば本物の相続税の専門家を見分けられるのでしょうか? 1. 税法六法を使いこなしているか? 相続税のプロは、「税法六法(法令・通達集)」を頻繁に引いています。インターネットで調べるだけの対応ではなく、法令そのものを素早く引けることが重要です。 2. 有名判例に通じているか? 税法は「前例主義」の世界です。つまり、最高裁判例などの解釈を理解していなければ、正しいアドバイスはできません。プロは、判例を暗記してはいませんが、常に最新の裁判例とその影響を把握し、判断根拠として引用できる状態にあります。 3. 毎年、最新の書籍や資料を更新しているか? 相続税の実務は、年々変化しています。税制改正、通達の変更、評価基準の見直しなど、キャッチアップが欠かせません。「数年前の知識」で仕事をしている税理士では、最新の対策や正確な申告はできません。 6相続の不安を安心に変えるために 相続は、人生の中でも大きな出来事です。そして、多くの人にとって「突然やってくるもの」でもあります。 そのとき、あなたの隣にいる税理士が、本当に信頼できる専門家かどうかは、その後の家族の未来を左右するほど重要です。 私たちは、「相続という大切な時間」に、誠実かつ専門的に寄り添う存在でありたいと思っています。 おわりに|新富士駅前から、安心の相続を 「新富士駅前 相続税の専門院」は、富士市・富士宮市の皆さまが安心して相談できる場所を目指して、今日も全力でサポートを行っています。 初めての相続税申告で不安な方 将来に向けて生前対策を検討されている方 他の事務所で不安を感じたことがある方 どんなご相談でも歓迎です。まずは一度、お話を聞かせてください。 この記事を書いた税理士 飯野明宏税理士公認会計士事務所 代表税理士 飯野 明宏 東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号 公認会計士協会東海会 登録番号:31555号 静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。 大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。 現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

22 6月 2025

倍率地域にある土地の評価

目次 1. 倍率方式とは? 2. 倍率評価の計算基礎となる「固定資産税評価額」 3. 倍率方式における土地評価の流れ 4. 倍率評価の「落とし穴」と注意点 5. 倍率地域で相続税評価額を減額できるケース 6. 倍率方式評価で気をつけるべき期限とタイミング 7. まとめ こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。 相続税を計算する際、土地の評価は非常に重要なプロセスです。土地の相続税評価額は、その土地が「路線価地域」にあるか、「倍率地域」にあるかによって算出方法が異なります。都市部では路線価を基に評価されますが、地方や郊外など路線価が設定されていない地域では「倍率方式」が用いられます。 今回は、一見シンプルに見える「倍率方式」について、その詳細と注意点を深掘りしていきます。 倍率方式は路線価方式と比べて計算が簡単に見えますが、実際には多くの落とし穴があり、適切な評価を行うためには細心の注意が必要です。特に、固定資産税評価額の確認方法や実際の土地利用状況の把握が重要になります。 1 倍率方式とは? 倍率方式とは、その土地の固定資産税評価額に、国税局長が定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式です。 この倍率は、地価事情が類似する地域ごとに、土地の売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士による鑑定評価額、精通者意見価格などを基に、その地域の実情に即した評価額となるように国税局長が毎年定めています。評価倍率表は、地域と地目ごとの評価倍率をまとめたもので、国税庁のウェブサイトや管轄の税務署で確認できます。 例えば、固定資産税評価額が500万円の土地に対し、評価倍率が1.2であれば、相続税評価額は600万円となります。 2 倍率評価の計算基礎となる「固定資産税評価額」 土地課税台帳に登録されている基準年度の価格などを指します。この評価額は、市区町村等から送付される固定資産税課税明細書に記載されている「価格(評価額)」欄で確認できます。紛失した場合は、名寄帳、固定資産税課税台帳、固定資産評価証明書で把握することが可能です。 3 倍率方式における土地評価の流れ 倍率地域における土地評価は、以下の4ステップで進めます。 ステップ1: 評価方式を特定する まず、財産評価基準書を確認し、対象地域が路線価方式か倍率方式かを特定します。路線価と評価倍率の双方が設定されている地域はありませんが、評価対象地が境界に位置する場合は注意が必要です。 路線価方式について > ステップ2: 固定資産税評価額を確認する 相続が開始した年度(1月1日時点)の固定資産税評価額を確認します。評価額は毎年4月から5月にかけて送付される課税明細書で確認でき、通常3年ごとに評価が見直されます。 ステップ3: 評価倍率表を確認する 国税局が公表する「財産評価基準書」にアクセスし、該当する都道府県、市区町村を選択して評価倍率表を確認します。同じ地目でも、地域や用途によって適用される倍率が異なる場合があります。 ステップ4: 相続税評価額を計算する 確認した固定資産税評価額に、評価倍率表で特定した倍率を乗じて評価額を算出します。 【具体的な計算例】 固定資産税評価額:800万円 評価倍率:1.1(宅地) 相続税評価額 = 800万円 × 1.1 = 880万円 ただし、現況地積と登記地積が異なる場合: 固定資産税評価額:800万円 登記地積:200㎡ 実際の面積:220㎡ 評価倍率:1.1 まず適正な固定資産税評価額を算出: 800万円 × 220㎡ ÷ 200㎡ = 880万円 次に相続税評価額を算出: 880万円 × 1.1 = 968万円 情報元:国税庁 倍率方式による土地の評価 4 倍率評価の「落とし穴」と注意点 倍率方式はシンプルな計算式に見えますが、路線価方式よりも検討すべき事項が多いとされています。特に以下の2点には注意が必要です。 (1) 固定資産税評価額が2つある? 登記簿謄本では原則として一つの土地に一種類の地目しか設定できません。しかし、固定資産税評価額が記載されている固定資産税評価証明書や名寄帳上は、同じ地番の土地で地目が2つ以上設定されていることがあります。 これは、登記簿謄本が所有者等の権利を明らかにすることを目的としているのに対し、固定資産税評価証明書等は適正に固定資産税を徴収することを目的としているためです。市区町村では、土地の現在の使用状況に応じて地目を把握し、地目ごとに固定資産税を課税するため、このような状況が生じます。 例えば、同じ地番の土地が「宅地」と「農地」に分かれて評価されている場合、それぞれの地目の価格に、それぞれの地目の倍率を乗じて評価額を算出することになります。 (2) 実際の面積と固定資産税評価証明書等の地積が異なる 実際の土地の面積(現況地積)が、固定資産税評価証明書等に記載されている地積(登記地積)と異なる場合があります。これは「縄延び」や「縄縮み」と呼ばれる現象で、固定資産税評価額は登記簿上の面積で算定されているために起こります。 この場合、単に固定資産税評価額に倍率を乗じるだけでは適正な評価額を算定できません。そのため、以下の算式によって適正な固定資産税評価額を算出した上で、相続税評価額を算定する必要があります。 その土地の固定資産税評価額 × 実際の面積 ÷ 固定資産税評価証明書等の地積 したがって、相続開始時点での土地の実際の利用状況(地目)と実際の面積をしっかり確認することが重要です。課税地目と実際の現況が異なる場合、相続開始時点の地目に基づいて評価額を算出します。また、登記上の面積と実際の面積が大きく異なる場合は、測量を行い正確な面積を確認することが大切です。 (3) 相続開始時点での地目と固定資産税評価額の地目が異なる場合 相続開始時点で土地の利用状況が変わっている場合、固定資産税評価額の地目と実際の地目が異なることがあります。この場合、相続開始時点の現況地目に基づいて評価を行う必要があります。 例えば、固定資産税評価額では「農地」として評価されているが、実際には「宅地」として利用されている場合、宅地としての倍率を適用することになります。 情報元:国税庁 倍率方式によって評価する土地の実際の面積が台帳地積と異なる場合の取扱い 5 倍率地域で相続税評価額を減額できるケース 倍率地域であっても、特定の条件を満たす土地では相続税評価額を減額できる場合があります。主なケースは以下の3つです。…

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