相続税で控除できる葬儀費用

2025年6月3日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士、飯野明宏です。

葬儀費用については「相続税から控除できる」ということをご存知の方も多いと思います。

葬儀にかかった費用の多くは、相続税の計算で相続財産から差し引くことができるのです。ただし、全ての葬儀関連費用が対象になるわけではありません。

今回は、どのような費用が控除の対象となるのか、逆に対象とならない費用は何なのかについて、解説します。

葬儀

1 そもそも葬儀費用が控除できる理由とは?

次のコラムで、基本的な相続税の計算について解説しています。ご確認ください。
相続税の全体像について >

葬儀費用は、厳密には故人の債務ではありませんが、故人の遺産から支払うのが一般的であるため、相続税法では特別に控除の対象とされています。これを「債務控除」と呼びます。

つまり、相続税を計算するときは、相続した財産の金額から葬儀費用を差し引いた金額に対して課税されるということです。葬儀費用が控除できれば、その分だけ相続税を節税できることになります。

次のコラムで、葬儀費用以外の債務控除について解説しています。ご確認ください。
債務控除について >

2 控除の対象となる葬儀費用


情報元:国税庁 相続財産から控除できる葬式費用

相続税の計算において控除できる葬儀費用は、以下のようなものです。

火葬・埋葬・納骨にかかった費用

基本的な葬儀の流れで必要な費用はすべて対象です。仮葬式と本葬式を両方行った場合は、その両方の費用が認められます。

納骨に関する費用も控除対象です。

遺体や遺骨の回送にかかった費用

故人を病院から自宅や葬儀場に搬送する費用火葬場への搬送費用などが該当します。

通夜・告別式など「通常葬式にかかせない費用」

お通夜や告別式にかかった費用は、一般的に葬式に欠かせないものとして控除対象になります。

具体的には:

  • ■会場費
  • ■式場装飾費
  • ■音響設備費
  • ■受付用品費 など

お寺さんや牧師さんなどへのお礼

読経料、お布施、などが含まれます。

通夜・告別式での飲食代

参列者にふるまう食事代はすべて対象です。仕出し業者に依頼した分だけでなく、自分でスーパーやコンビニで買い出しした軽食や飲み物代も含まれます。

会葬御礼品の購入代金

葬儀当日に弔問客全員にお渡しするタオルやハンカチなどの会葬御礼品も、「通常葬儀にかかせない費用」として控除可能です。ただし、金銭でのお礼は対象外です。

その他認められる費用

  • ■死亡診断書や死体検案書の発行費用:ご遺体の埋葬までの処置に直接必要なもの
  • ■お車代・交通費:喪主の帰省費用、僧侶へのタクシー代など(常識的な額の範囲内)
  • ■お花代:通夜や告別式に要した生花代やお供え物
  • ■死体の捜索・運搬費用:事故などで必要になった場合

3 控除の対象とならない葬儀費用

葬儀に関連する費用であっても、以下のものは相続税の控除対象になりません。

香典返しにかかった費用

香典は参列者から喪主への贈与であり、税務上非課税の収入とされています。そのため、非課税の収入に対する香典返しを控除対象とするとバランスが取れないため、債務控除はできません。

注意点: 香典返しをせず、会葬御礼のみを渡した場合、その会葬御礼が香典返し扱いとなり、控除の対象から外れる可能性があります。

墓石や墓地に関する費用

  • ■墓石の購入費用
  • ■墓地の購入費用
  • ■墓地を借りるための費用
  • ■墓石への戒名彫刻費用(文字彫り代)

これらは葬儀には直接関係しないため、控除対象になりません。

初七日以降の法事費用

初七日以降の法要は、一般的に葬儀(通夜・葬儀式・告別式・火葬まで)とは区別され、控除対象には含まれません。

対象外となるもの:

  • ■初七日以降の法事の食事代
  • ■花代
  • ■僧侶へのお布施
  • ■お車代

その他の対象外費用

  • ■永年供養料:遺骨の管理や今後の供養依頼のための費用
  • ■仏壇や位牌:葬儀後の仏具で、葬儀に直接関係しないもの
  • ■親族や参列者へのお車代:葬儀にかかせない費用とはいえないため

霊柩車みおくり

4 証拠書類の保管が重要

葬儀費用の控除を受けるためには、その費用を証明する書類が必要です。

領収書がある場合

仕出し業者への支払いなど、請求書や領収書がある場合は必ず保管しておきましょう。

領収書がもらえない場合

お寺さんへのお布施や心付け、戒名料など、領収書がもらえないこともあります。その場合でも、内容と金額をメモに残しておけば、証拠書類として認められます。

ただし、金額を偽ることはできませんので、正確な記録を心がけましょう。

5 注意すべきポイント

相続開始直前に引き出した現金

故人が亡くなる直前に、葬儀費用に充てるために預金口座から現金を引き出すことがあります。その場合、引き出された現金は「手許現金」として、相続税の計算上、プラスの財産に含めなければなりません。

これは税務調査で問題になりやすい点の一つですので、注意が必要です。

相続人以外が負担した費用

お花代などで、相続人以外の人が負担した金額は控除対象になりません。弔問客が負担したお花代が一括請求書に記載される場合もありますので、誰が負担したかを明確にしておくことが大切です。

判断が難しいケース

どの費用が控除対象となるかの判断は、個別の状況によって変わることもあります。特に、会葬御礼が香典返しとみなされるケースなど、微妙な判断が必要な場合もあります。

6 まとめ:専門家への相談をおすすめします

葬儀費用の控除は、相続税を適正に計算するために重要な制度です。しかし、どの費用が対象となるかの判断は複雑な場合もあります。

適切に葬儀費用を控除し、税務署に指摘されない相続税申告を行うためには、専門家である税理士にご相談いただくのが安心です。 関連しそうな領収書等はすべて保存しておくことをお勧めします。

大切な家族を亡くした悲しみの中でも、税務上の取り扱いを正しく理解することで、適切な相続手続きを進めることができます。不明な点がある場合は、遠慮なく専門家にご相談ください。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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