こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
「父が亡くなったけど、どんな生命保険に入っていたか全く知らない…」「保険証券が見当たらない…」
こんな状況でお困りの方はいませんか?このような状況は決して珍しくありません。しかも、保険金請求権は被相続人の死亡日の翌日から3年で時効消滅する可能性があります。
そんな時に役立つのが「生命保険契約照会制度」です。今回は、この便利な制度について、概要から利用方法、注意点まで詳しく解説していきます。
1 生命保険契約照会制度とは?画期的なセーフティネット
生命保険契約照会制度は、亡くなったご家族が加入していた生命保険契約の有無を、一般社団法人生命保険協会を通して各保険会社に確認できる制度です。
制度の歴史と目的
以前は災害時のみ利用可能でしたが、2021年7月1日からは平時においても利用できるようになりました。この制度は、ご遺族が保険金の請求漏れを防ぎ、大切な保険金を確実に受け取るためのセーフティネットとして創設されました。
2 どんな時に利用できるの?
この制度は、主に以下の3つのケースで利用できます。
利用できる場面
- ■保険契約者または被保険者が死亡した場合
- ■保険契約者または被保険者の認知判断能力が低下し、医師による診断を受けた場合
- ■災害時の死亡もしくは行方不明の場合
今回は、特に相続の際に利用する方法に焦点を当ててご説明します。
3 制度の利用方法を詳しく解説
相続を理由に生命保険契約照会制度を利用する際の具体的な流れを見ていきましょう。
誰が申請できるの?
照会者(申請できる人)は以下の通りです:
亡くなった方の法定相続人
- ■亡くなった方の遺言執行者
- ■上記法定相続人の法定代理人(成年後見人、親権者など)
- ■上記法定相続人または遺言執行者の任意代理人(弁護士、司法書士、行政書士に限定)
ご家族の中から「照会代表者」を1名決め、その方が申請します。他のご家族は、照会代表者に申請を委任する形になります。
申請方法と費用
申請方法: 生命保険協会に対して、オンラインまたは郵送で申請
必要書類:
- ■照会代表者の本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- ■亡くなった方の法定相続情報一覧図
利用料: 照会者1名につき3,000円(税込) 受付完了後にクレジットカードまたはコンビニエンスストア払いで支払います。
調査期間と結果
調査期間: 生命保険協会への申請から照会結果の回答まで、約2週間程度
照会結果でわかること:
- ■契約の有無
- ■保険金等の請求が可能な契約かどうか
注意: 具体的な保険の種類や保険金額などの詳細な内容はわかりません。
保険会社判明後の手続き
保険会社が判明したら、速やかに該当の保険会社に直接連絡し、保険金の請求手続きを行いましょう。
連絡時に必要な情報:
- ■亡くなった方の氏名
- ■住所
- ■生年月日
- ■死亡日など
4 利用上の重要な注意点
この制度を利用するにあたって、知っておきたいポイントがあります。
調査対象となる契約の制限
照会の対象は、申請日現在有効に継続している個人保険契約に限られます。
対象外となるもの:
- ■すでに保険金が支払われたもの
- ■解約済みのもの
- ■失効しているもの
- ■財形保険など
その他の制限事項
照会できる人数: 1回の手続きで、最大10名まで(代理人申請の場合は9名まで)の照会が可能
相続税申告との関係: 生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合があります。相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)に間に合うよう、余裕を持って照会申請を行いましょう。
5 まとめ:大切な保険金を見逃さないために
生命保険契約照会制度は、亡くなった方がどのような生命保険に加入していたか不明な場合に、その存在を確認できる非常に便利な制度です。
この制度を活用するメリット:
- ■故人が遺した大切な保険金の請求漏れを防げる
- ■相続財産全体を正確に把握できる
- ■相続税の申告において重要な生命保険金の調査ができる
覚えておきたいポイント:
- ■費用は1名につき3,000円と手頃
- ■調査期間は約2週間
- ■申請は法定相続人が可能
- ■相続税申告期限を考慮して早めの申請を
相続は突然やってくるものです。いざという時に慌てないよう、この制度の存在を覚えておいていただければと思います。