赤字でも諦めない!拡充された賃上げ促進税制で最大45%控除&5年繰越

2025年5月22日
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2025年5月22日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

物価高や人手不足が続く中、優秀な人材の確保や社員の定着は多くの中小企業にとって切実な課題です。そんな中、国は賃上げに取り組む企業を後押しするため、令和6年度税制改正により「中小企業向け賃上げ促進税制」を大幅に拡充しました。

今回は、税制の全体像や活用方法、そして赤字企業でも利用できる「繰越控除制度」について、実務に即した形でわかりやすく解説します。

リンク 経済産業省 中小企業向け 賃上げ促進税制 ご利用ガイドブック


1 賃上げ促進税制とは?基本制度のしくみ

この制度は、前年度より給与等の支給額を増やした中小企業に対して、増加額の一部を法人税(または所得税)から直接控除できる仕組みです。

対象となる主な企業

  • 資本金1億円以下の青色申告法人

  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の法人

  • 常時従業員1,000人以下の個人事業主(令和7年〜9年適用)

※大企業の子会社や高所得法人は対象外。

控除の条件

  • 国内雇用者に支払った給与・賞与(役員報酬・退職金は除く)の対前年比が1.5%以上増加していること

この条件を満たすと、増加額の15%が法人税等から控除されます。

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2 最大45%の税額控除を実現する3つの上乗せ措置

次の3つの要件を満たすことで、最大45%の控除率まで引き上げられます。

① 賃上げ率が2.5%以上:+15%

給与等支給額の増加率が2.5%以上になると、控除率は基本の15%にさらに15%加算され、合計30%に。

② 教育訓練費の増加:+10%

前年度比で5%以上増加し、かつ給与総額の0.05%以上であることが条件。対象は社外研修費用や外部講師謝礼等です。

③ 女性活躍・子育て支援認定:+5%

「くるみん」「えるぼし」などの認定取得で5%加算。認定の種類と取得時期によって適用条件が異なるため注意が必要です。


3 赤字でも安心!5年間繰越できる控除制度が新設

最大の注目点は、新設された繰越税額控除制度です。

これまで赤字企業や、控除額が法人税の20%上限を超えた場合は「控除しきれない金額」が切り捨てられていました。

しかし令和6年4月1日以降に開始する事業年度からは、その未控除額を最長5年間繰り越し、将来の黒字化後に法人税から差し引けるようになります。

例:赤字企業が控除135万円を5年間繰り越す

1年目:控除未適用(赤字)
2〜5年目:黒字化した年度で、繰越控除が可能(その年の法人税額の20%が上限)

ただし、毎年必要な明細書の添付を忘れると控除権を失うので、必ず継続して対応しましょう。

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4 申告時の実務ポイントと注意点

制度を適用するには、以下の手続きが必要です。

  • ■確定申告書への「別表六(二十四)」の添付

  • ■繰越控除適用時は追加書類の添付

実務上の注意点

  • ■雇用者給与等支給額からは雇用調整助成金等を控除

  • ■教育訓練費は内定者費用・旅費交通費は対象外

  • ■認定取得の時期は制度により異なるため事前に確認

  • ■繰越控除制度の継続適用には、毎期の明細書添付が必須


5 戦略的に制度を活用するポイント

この制度を最大限に活用するには、単なる「賃上げ」ではなく、計画的な取り組みが必要です。

  • ■賃上げ率2.5%以上を目指す給与設計

  • ■年初から教育訓練費の予算計画と記録管理

  • ■認定取得を見据えた働き方改革・制度設計

  • ■他の税額控除(研究開発税制など)との併用調整

賃上げは人材確保のアピール材料にもなります。認定制度を活用すれば、企業のブランド力も向上します。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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