自宅の買い替え、「3000万円控除」と「住宅ローン控除」に注意!

2025年5月22日
Posted in コラム
2025年5月22日 管理人

こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。

マイホームの売却と新居の購入を検討されている方から、「売却時の3000万円特別控除と住宅ローン控除は一緒に使えるの?」というご質問をよくいただきます。結論から申し上げると、原則として併用はできません

今回は、なぜ併用できないのか、その理由と例外的なケースについて、わかりやすく解説していきます。

住宅

1. まずは基本を理解しよう!2つの税制優遇制度

居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除

マイホームを売却して利益(譲渡益)が出た場合、最高3000万円まで税金がかからない特例です。例えば、3500万円で購入した自宅を4000万円で売却した場合、通常なら500万円の利益に税金がかかりますが、この特例を使えば税金は0円になります。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)

住宅ローンを利用してマイホームを購入・改築した場合に、年末のローン残高の一定割合を税金から直接差し引ける制度です。

2. なぜ併用できないの?法律で決まっている理由

住宅ローン控除の適用要件に制限がある

住宅ローン控除を受けるための条件の一つに、「過去に3000万円特別控除を受けていないこと」が明記されています。つまり、法律上、併用は最初から想定されていないのです。

併用禁止期間は合計6年間

令和2年度の税制改正により、併用できない期間が延長されました。

改正前: 新居入居年の前後2年間(計5年間) 改正後: 新居入居年とその前2年、居住の用に供した日の属する年の翌年以後3年以内(計6年間)

例えば、令和7年に新居に入居した場合:

  • 令和5年〜令和10年の間に3000万円特別控除を使うと
  • 住宅ローン控除は一切受けられません

この改正は、「新居に住み始めてから3年後に旧居を売却して特例を使う」という抜け道を防ぐためです。

3. 例外的に両方の恩恵を受けられる「レアケース」

原則として併用はできませんが、タイミングをうまくずらすことで、結果的に両方の制度を活用できる場合があります。

売却→賃貸→購入のパターン

  1. 旧自宅を売却し、3000万円特別控除を適用
  2. 3年程度賃貸住宅で生活
  3. 新居を購入し、住宅ローン控除を適用

このように期間を空けることで、両方の制度の恩恵を受けることが可能です。ただし、賃貸期間中の家賃負担などを総合的に考慮する必要があります。

売家 (2)

4. 一度適用した制度から変更はできる?

売却と購入のタイミングによっては、「先にこちらの特例を使ったけど、後からもう一方の方が有利だった」ということもあります。そんな時、変更は可能なのでしょうか?

「3000万円特別控除」を先に適用した場合

変更不可です。 一度適用した3000万円特別控除を取り消すことは認められていません。後から住宅ローン控除に切り替えることはできません。

「住宅ローン控除」を先に適用した場合

変更可能です。 住宅ローン控除を取り消して、3000万円特別控除に切り替えることができます。ただし:

  • 修正申告が必要
  • これまで受けた住宅ローン控除分の税金を返還
  • 手続きが複雑

まとめ:事前のシミュレーションが何より重要

マイホームの売却と購入は人生の大きな出来事です。どちらの制度を選ぶかによって、税負担が大きく変わる可能性があります。

重要なポイント:

  • 原則として併用はできない
  • 併用禁止期間は6年間
  • タイミングをずらせば両方活用できる場合もある
  • 3000万円特別控除から住宅ローン控除への変更は不可
  • 住宅ローン控除から3000万円特別控除への変更は可能(手続き必要)

どちらの制度がご自身にとって有利なのか、ライフプランと合わせて事前にしっかりとシミュレーションすることをお勧めします。

また、実際の適用については、私たち他、税理士の判断をあおいでください。

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飯野明宏税理士
この記事を書いた税理士

飯野明宏税理士公認会計士事務所
代表税理士 飯野 明宏

東海税理士会富士支部所属 登録番号:127320号

公認会計士協会東海会 登録番号:31555号

静岡県富士市横割出身。静岡県立富士高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部を経て、早稲田大学大学院会計研究科でMBAを取得。

大学院修了後は、あらた監査法人(PwC Japan有限責任監査法人)や、都内の税理士法人にて勤務。

現在は、地元・富士市・富士宮にて「飯野明宏税理士公認会計士事務所」を運営し、法人税・相続税の両面に強みを活かした専門的なサポートを提供しています。

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