1 家庭用財産とは?相続税の対象になる?
こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
家庭用財産とは、家具や家電、衣類、自動車、貴金属、書画骨董、そして電話加入権などの「動産全般」を指します。これらは被相続人の所有する財産として、相続税の対象に含まれます。
2 家庭用財産の評価単位と方法
家庭用財産は原則として「一般動産」として個別に評価されますが、実務上の負担を考慮して、1点あたり5万円以下の動産については「家財一式」として一括評価することが認められています。
評価方法の原則は、売買実例価額、精通者意見価格、類似財産の実例価額などを参考にします。評価が困難な場合は、未償却残高による評価も可能です。
家財一式の評価額の相場
実務上、「家財一式」として計上する評価額は10万円~30万円程度が一般的です。一般家庭であれば10万円程度、被相続人が高級家具等を揃えていた場合は少し多めに評価するとよいでしょう。ただし、具体的な金額は被相続人の生活状況や家財の内容を考慮して決定します。
3 種類別に見る家庭用財産の評価ポイント
- ■家具:タンス、ソファー、ベッド、机など。中古家具としての市場価格や減価償却ベースで評価。
- ■家電:テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどは中古買取価格や未償却残高で評価。
- ■衣類:ブランド品や高額衣料は個別評価。一般衣類は家財一式に含めて評価。
- ■自動車:中古車業者の査定や市場価格で評価。
- ■貴金属:金、ダイヤモンドなどは業者の買取価格を基準に評価。
- ■書画骨董:専門家による査定または実例価額で評価。
4 電話加入権の取扱いはどう変わった?
かつては電話加入権の評価額は全国一律1,500円とされていました(財産評価基本通達161(2)による)。しかし、令和3年1月1日以降の相続からは通達改正により、電話加入権も一般動産と同様に売買実例価額や精通者意見価格等に基づいて評価することとされました。
さらに、家庭用動産の一括評価の対象に含めることが明確に認められたため、実務上は電話加入権を個別に評価・申告する必要がなくなっています。実際、令和3年以降の財産評価基準書からは電話加入権の評価項目が削除されています。
5 申告時の注意点とリスク
申告漏れを防ぐために
家庭用財産は国税庁の「相続税の申告のためのチェックシート」でも重要項目として位置づけられています。少額だからといって申告を怠ると、以下のリスクがあります。
- ■財産隠しの疑い:税務署から意図的な隠蔽と判断される可能性
- ■過少申告加算税:申告漏れが発覚した場合のペナルティ
- ■税務調査への影響:「いい加減な申告」との印象を与え、他の財産も詳しく調査される可能性
申告書への記載方法
家庭用財産は相続税申告書の第11表に記載します。
- ■種類:「家庭用財産」
- ■細目:「家庭用財産」
- ■利用区分:「家財一式」または「家具等一式」
- ■所在場所:被相続人の住所
たとえ評価額が少額でも、適切に申告することで税務調査官に良い印象を与え、円滑な申告手続きにつながります。