1 特定路線価とは?通常の路線価との違い
こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
土地の相続税評価額を計算するために路線価図を確認します。しかし、前面道路に路線価が付されていないというケースに遭遇することもあります。このような土地はどのように評価すればよいのでしょうか?
そこで登場するのが「特定路線価」です。特定路線価とは、路線価が設定されていない道路に面した宅地について、相続税や贈与税の申告のために税務署に特別に設定してもらう路線価のことです。
特定路線価は、納税者が税務署に申請して、はじめて、設定されるものです。
2 特定路線価が設定できる条件
特定路線価を設定するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
・相続税または贈与税の申告のために必要であること
他の目的で特定路線価を設定することはできません。
・評価対象の土地が路線価地域にあること
倍率地域にある場合は、特定路線価を設定することはできず、評価のためには設定する必要もありません。
・路線価が設定されていない道路のみに接していること
2つ以上の道路に接していて、そのうちの1つが路線価のある道路である場合、特定路線価を設定することはできません。
・道路が評価する土地の専用通路でないこと
専用通路は評価対象の土地の一部として評価することになります。
・道路が建築基準法上の道路等であること
建築基準法上の道路等であるかどうかは、市役所等で調べることができます。
・該当年度の路線価が公開済であること
特定路線価の設定を必要とする年分の路線価が公開されていなければなりません。路線価は、通常、7月上旬に公開されます。この公開の前に特定路線価の設定を申請することはできません。
特定路線価が設定されない場合
特定路線価の申請をしても、必ずしも設定されるとは限りません。以下のような場合は申請が却下される可能性があります。
私有地を道路として使用しているケース、道路の幅員が極端に狭い場合、建築基準法上の道路要件を満たさない場合などです。
特定路線価が設定されなかった場合は、代替評価方法で評価を行います。近くに路線価が設定されている道路がある場合は「旗竿地評価」により、その路線価を基に奥行価格補正率や不整形地補正率を適用して評価します。周辺に路線価が設定された道路がない場合は「無道路地評価」等による評価もあります。
3 特定路線価の申請手続き
申請タイミングについて、重要な注意点があります。相続開始が1月から6月の場合、その年の路線価が7月に公開されてから申請することになります。特定路線価の設定には約1ヶ月かかるため、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)を考慮して、路線価公開後は速やかに申請することが重要です。
申請は税務署に対して行い、以下の書類や資料を提出します。
- 特定路線価設定申出書
- 別紙:土地や道路の状況を記載
- 添付資料:案内図、公図、写真など
- チェックシートで事前確認
提出後、約1ヶ月で「特定路線価回答書」が届きます。手数料は不要です。
4 特定路線価設定後の重要な注意点
特定路線価が設定されると、必ずその特定路線価を使用して評価を行わなければなりません。これは税法上の義務であり、他の評価方法を選択することはできません。
一方で、特定路線価を申請せずに、旗竿地評価等の方法で評価することも可能です。場合によっては、これらの方法の方が評価額が低くなり、相続税を節約できることがあります。
特定路線価を申請する前に、その土地が路線価地域にあるか倍率地域にあるかを必ず確認してください。国税庁ホームページの「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。倍率地域の土地は固定資産税評価額に評価倍率を乗じて評価するため、特定路線価の申請は不要です。
5 特定路線価申請時のチェックポイント
特定路線価の申請を検討する際は、以下の点を事前に確認しましょう。
事前確認事項として、その土地が路線価地域に所在するか、建築基準法上の道路であるか(市役所等で確認)、道路が評価対象土地の専用通路でないか、複数の道路に接している場合はすべて路線価未設定かを確認します。
申請タイミングの検討では、相続開始時期と路線価公開時期(7月上旬)の関係、申告期限(10ヶ月)までの期間、特定路線価設定期間(約1ヶ月)を考慮する必要があります。
また、代替評価方法との比較も重要です。特定路線価による評価と旗竿地評価等による評価のどちらが有利かを検討し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。