はじめに
こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
相続税申告において、不動産の評価は非常に重要でありながら、もっとも複雑な手続きの一つです。なかでも「評価単位の判定」は、その後の土地評価・家屋評価の出発点となります。
1 評価単位とは?
相続税評価における「評価単位」とは、課税対象となる財産をどのようなまとまりで評価するかを定める単位のことです。土地や家屋などの財産は、それぞれ評価単位ごとに分けて評価する必要があります。
- ■宅地 → 利用の単位ごと(1区画)
- ■田及び畑→耕作の単位となっている区画の農地(1枚)
- ■山林→1筆
- ■原野→山林と同じ
- ■雑種地→利用の単位となっている一団の雑種地(同一の目的に供されている雑種地)
- ■家屋 → 登記簿上の1棟ごと
- ■株式 → 銘柄ごと
2 土地の評価単位の考え方
宅地の評価単位は、原則として「利用の単位となっている1区画の土地」とされます。その判定においては、以下の3つの観点が重要です。
1. 地目別の評価単位と特徴
土地は地目(用途区分)ごとに評価方法や注意点が異なります。その前提となる評価単位にも違いがあります。
・宅地
住宅や店舗などの建物が建っている土地を指します。利用単位ごとに評価されます。借家がある場合などは、借家権の影響を受けた敷地単位で評価する必要があります。
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・田および畑(農地)
農地として利用されている場合、固定資産税評価額に倍率をかけて評価します。宅地と一体的に利用されている場合(例:自宅横の家庭菜園)で、農地としての実態がない場合には宅地として評価することもあります。
・山林
木材の育成を目的としている土地です。原則として固定資産税評価額に倍率をかけて評価しますが、市街地に近く宅地化の可能性がある山林については宅地比準方式を用いる場合があります。
・原野
利用目的の定まっていない荒れ地などです。山林と同様に倍率方式が基本ですが、立地や周辺環境によっては宅地化の可能性を考慮することもあります。
・雑種地
どの地目にも明確に該当しない土地で、駐車場、資材置場、倉庫用地などが該当します。実質的な利用状況や周辺の宅地の価額を基準に評価します。宅地と一体利用されている場合には、宅地としてまとめて評価することもあります。
2. 権利の観点
土地の上に第三者の権利(借地権、借家権など)が設定されているかどうかによって評価単位が分かれます。
例:
- ■所有者が自ら使用している宅地 → 一体評価
- ■複数の借家が建つ土地 → 借家人ごとに敷地が分割され、個別に評価
- ■サブリース会社への一括賃貸 → 各棟単位で契約解除可能であれば各棟別に評価
3 家屋の評価単位の考え方
家屋については、原則として「登記簿上の1棟単位」で評価されます。
- ■評価基準:固定資産税評価額(家屋番号ごとに設定)
- ■区分所有建物(マンションなど):建物全体の評価を基に、各区分所有者に対応する割合で評価
- ■附属施設(電気・ガスなど)は含まれるが、門・塀・庭園は別評価