1 固定資産税とは?基本的な仕組み
こんにちは。富士市・富士宮の税理士の飯野明宏です。
固定資産税とは、土地・家屋・償却資産といった固定資産に対して課される地方税です。税額は、毎年1月1日時点の所有者(賦課期日現在)に対して、市町村が評価した課税標準額に税率(標準税率1.4%)を乗じて計算されます。評価額は3年ごとに見直され、納税通知書は原則として毎年4月〜6月に送付されます。
2 相続発生前後の納税義務者
1月1日時点で被相続人が固定資産を所有していた場合、その年度の固定資産税は被相続人に課されます。ただし、被相続人がその後亡くなった場合、その税金は相続人に引き継がれます。
相続人がまだ確定していない場合
相続発生時に遺産分割が未了の場合、固定資産税の支払い義務は相続人全員の連帯責任です。市町村には「相続人代表者指定届出書」を提出し、通知書などの送付先を明確にする必要があります。
相続人が決定している場合
遺産分割協議が成立し、不動産の所有者が確定している場合には、相続登記と「固定資産現所有者申告書」の提出を行うことで、新所有者が納税義務を引き継ぎます。なお、2024年4月1日から相続登記が義務化され、3年以内の登記申請が求められます。
遺産分割協議について >
3 相続発生時期と納税額への影響
固定資産税は年4回(例:4月・7月・12月・翌2月など)に分けて納付されます。相続の発生時期によっては、既に一部の納税が完了していることもあります。
- ■被相続人が納付済の分 → 相続人の負担なし
- ■納付未了の分 → 相続人が負担
被相続人死亡時点で未払いの固定資産税については、相続税の債務控除の対象になります。
4 未払い固定資産税の取り扱いと債務控除
被相続人が未納の固定資産税を残して亡くなった場合、その税金は免除されず、相続人が引き継いで納付することになります。
- ■未払い税額:相続税申告において「債務控除」の対象
- ■延滞税:
- □被相続人が生前に負担していた延滞税 → 債務控除対象
- □相続人が相続後に滞納して発生した延滞税 → 控除対象外
5 必要な相続手続きと届出一覧
1. 納税額の確認
- ■納税通知書で確認(再発行不可)
- ■納税証明書・課税証明書の取得(戸籍・除籍謄本が必要)
2. 相続人代表者指定届出書
- ■所有者未確定・相続未了時に提出
3. 相続登記
- ■所有者が決定したら速やかに申請(2024年4月から義務)
4. 固定資産現所有者申告書
- ■登記が間に合わない場合の所有者申告手続き
まとめ
- ■固定資産税は1月1日時点の所有者に課税される。
- ■相続が発生した場合、原則として相続人が納税義務を引き継ぐ。
- ■未払い分は債務控除可能。延滞税は条件により控除対象外。
- ■各種届出(代表者指定・現所有者申告)や相続登記が必要。
- ■相続放棄すれば固定資産税の義務も免除される。