こんにちは。富士市・富士宮市の税理士、飯野明宏です。
令和5年10月に導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、「適格請求書」の内容が非常に重要になります。適格請求書を正しく発行できなければ、取引先にとって仕入税額控除の適用ができない可能性があるため、正確な記載が求められます。
今回は、インボイスとして認められるために必要な7つの記載事項を整理するとともに、屋号や取引先コードによる記載が認められるかどうかについて、国税庁の資料に基づき詳しく解説いたします。
1 適格請求書に記載が必要な「7つの項目」
適格請求書に求められる記載事項は、次の7つです。
1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
適格請求書を発行できる事業者であることを証明する最重要項目です。
13桁の登録番号(「T+番号」)と、法人名または個人事業主の氏名を記載します。
※個人事業主が旧姓や外国人の通称を使用したい場合は、「公表事項の変更申出書」の提出が必要です。
2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
商品の引き渡し日やサービス提供日など、実際に課税取引が行われた日を記載します。
3. 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容
提供した商品やサービスの具体的な内容を明記します。
軽減税率の対象商品には「※」などを付して軽減対象である旨を明示します。
4. 税率ごとに区分した課税資産の譲渡等の合計金額(税抜または税込)
適用税率ごと(10%、8%など)に金額を分け、合計額を税抜または税込で記載します。
5. 税率ごとに区分した消費税額等
上記の合計金額に対する消費税額を、税率ごとに記載します。
※1円未満の端数は、税率ごとに1回だけ切上げ・切捨て・四捨五入いずれかで処理。
商品単位での端数処理の合計はNGです。
6. 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
請求書の受取側(買手)である事業者名を記載します。
7. 取引内容に応じて必要となるその他の事項
次のような特殊な取引には追加記載が必要になります:
簡易インボイス(適格簡易請求書)の場合
返品や値引きに関する請求書(適格返還請求書)
電子請求書や媒介者を介した取引の場合 など
2 屋号での記載はできる?取引先コードでもいい?
■ 屋号での記載は「特定できればOK」
個人事業主がよく使用する屋号(例:「〇〇工房」「〇〇商店」)について、
適格請求書を発行する事業者を特定できれば記載可能です。
✅ 特定のためには、屋号と合わせて電話番号や登録番号の記載が推奨されます。
■ 取引先コードによる記載は「条件付きでOK」
社内管理で使われる取引先コードについても、次の条件を満たせば記載可です:
取引先コードが登録番号と紐付けられた一覧表で管理されている
買手側もそのコードから確実に登録番号を確認できる
このような運用があれば、「取引先コード+登録番号」による記載が認められます。
⚠ 売手が適格請求書発行事業者でなくなった場合は、速やかにコード表を修正し、記録を残すことが必要です。
まとめ 適格請求書の記載要件を満たし、確実な税額控除を
インボイス制度のもとでは、「適格請求書」の記載ミスが税務上の大きなリスクになります。
✅ 記載項目チェックリスト(7項目)
事業者の氏名・登録番号
取引年月日
取引内容
金額(税率別・税抜or税込)
消費税額(税率別)
相手先の氏名・名称
その他必要な情報(簡易・返還等)
これらを確実に記載しつつ、屋号や取引先コードの運用にはルールを守った対応を行うことで、安心してインボイス制度に対応することができます。