こんにちは。
富士市・富士宮市で税務支援を行っている税理士の飯野明宏です。
通常、商品やサービスの提供には「消費税」がかかりますが、すべての取引が課税対象になるわけではありません。
実際には、消費税がかからない取引も数多く存在し、それらは大きく以下の3つに分類されます:
不課税取引
非課税取引
免税取引(※今回は対象外)
この記事では特に、「不課税取引」と「非課税取引」の違いと具体例に絞って、実務に役立つ視点から解説していきます。
1 「不課税取引」とは?
不課税取引とは、そもそも消費税の課税対象となる「条件」を満たさない取引です。
課税対象となるには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります:
国内取引である
事業者による取引である
事業として行われた取引である
対価を得て行われた資産の譲渡やサービスの提供である
このどれか1つでも欠けると、「不課税」となり、消費税の計算・申告の対象外になります。
✅ 不課税取引の主な具体例
取引内容 | 理由 |
---|---|
国外での取引 | 「国内取引」の要件を満たさない |
個人が自宅の家具を売る | 「事業として」ではない |
試供品や寄付、補助金の受け取り | 「対価性」がない |
保険金・損害賠償金・出資配当金 | 「譲渡・役務の提供」に該当しない |
給与収入者の自家用車の売却 | 「事業者による取引」ではない |
2 「非課税取引」とは?
非課税取引とは、消費税の課税対象であるにもかかわらず、法令によって課税しないこととされた取引です。
これは、消費税の性質や社会政策的配慮(医療・福祉・教育等)によるもので、法律で列挙された取引だけが該当します。
✅ 非課税取引の主な具体例
区分 | 非課税となる取引内容 |
---|---|
不動産 | 土地の譲渡・貸付(ただし、駐車場は課税) |
金融・証券 | 有価証券、預金、利息、外貨両替 |
支払手段 | 商品券、印紙、プリペイドカード(売買用は課税) |
公的サービス | 住民票、戸籍謄本、行政手数料など |
医療・福祉 | 健康保険適用の診療、介護・障害福祉サービス |
教育 | 学校教育・授業料など |
その他 | 義肢・車椅子など身体障害者用物品、埋葬・火葬料(※葬儀料は課税) |
3 非課税・不課税取引の税務処理上の違い
① 不課税取引の特徴
消費税法の適用外のため、申告・集計の必要なし
消費税の売上にも、課税売上割合の計算にも 含まれない
② 非課税取引の特徴
消費税法上の「売上」には含まれる
課税売上割合の計算で「分母」には含まれるが、「分子」には含まれない
非課税売上に対応する仕入れには、仕入税額控除ができない
4 実務上よくある混同と注意点
「補助金を受け取ったが、請求書に消費税を記載していいのか?」
→ 補助金=対価性がない=不課税。消費税を加算してはいけません。
「商品券の販売は非課税?課税?」
→ 使用するための販売は非課税ですが、転売・仕入れ用として販売している場合は課税対象になります。
このように、取引内容によって課税の有無は微妙に変わるため、実務での確認は慎重に行う必要があります。
5 判断に迷うときは税理士にご相談を
不課税・非課税の誤認によって、
消費税の過大納付
仕入税額控除の誤適用
売上区分の計上ミス
といったトラブルが発生することもあります。
特に、補助金、行政手数料、金融取引、不動産賃貸、医療福祉関係のサービスを扱う方は、判断が複雑になりがちです。
まとめ「課税されない取引」の正確な理解を
不課税取引:そもそも課税対象外。税の集計から除外。
非課税取引:法律で非課税とされている取引。集計上は売上に含まれる。
非課税売上が多い事業者は、仕入控除制限に注意
実際の取引判断は複雑なため、専門家のチェックが安心