事業者が知るべき「2割特例」
こんにちは。
富士市・富士宮市で税理士業務を行っている飯野明宏です。
2023年(令和5年)10月からスタートした「インボイス制度」は、特に免税事業者の皆様にとって大きな転機となりました。
「取引先からインボイスを求められた」
「課税事業者にならないと取引継続が難しい…」
そんな声に対応するため、免税事業者がインボイス発行事業者になる場合の特例として設けられたのが「2割特例」です。
今回は、この制度の仕組みとメリット、注意点を分かりやすく解説します。
1 免税事業者がインボイスを発行できない理由
インボイス制度では、課税事業者(仕入先)が仕入税額控除を受けるために、「適格請求書(インボイス)」の保存が必要です。
ところが、免税事業者はインボイスを発行できません。
その結果:
「インボイスが発行できないなら取引できない」
「発注がストップしてしまった」
といった事態が現実に起きています。
そのため、免税事業者であった方が課税事業者として登録し直すケースが増えています。
2 免税事業者→課税事業者になるとどうなる?
免税事業者がインボイス発行事業者になるには、原則として**「課税事業者選択届出書」**が必要です。
しかし、以下の期間に限り、届出を出さなくても登録可能です。
✅ 免税事業者の特例登録期間
令和5年10月1日 ~ 令和11年9月30日
この期間中に「適格請求書発行事業者」として登録すれば、その登録日から自動的に課税事業者となります。
3 納税額が心配な方へ。「2割特例」とは?
課税事業者になると、売上にかかる消費税を計算し、納税する必要が出てきます。
その納税額を抑え、事務負担を軽減するために設けられたのが「2割特例」です。
✅ 2割特例の概要
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | インボイス制度の導入に伴い、 免税事業者から課税事業者となった方 (例:フリーランス、小規模事業者など) |
適用期間 | 令和5年(2023年)10月1日 ~ 令和8年(2026年)9月30日の間の課税期間 |
計算方法 | 消費税の納税額 = 売上にかかる消費税額 × 20% ※仕入税額控除の計算不要/帳簿保存のみでOK |
通常の仕入税額控除を使わず、売上にかかる消費税の20%だけを納めればOKという簡便な制度です。
4 2割特例のメリット
メリット | 内容 |
---|---|
✅ 届出不要 | 事前の届出書提出は不要。 確定申告書に「特例を適用する旨を記載」するだけでOK |
✅ 縛りなし | 簡易課税のような2年間の継続適用義務がないため、柔軟に制度選択が可能 |
✅ 計算が簡単 | 消費税納税額 = 売上にかかる消費税額(10%)× 20% → 実質売上金額の2%を納税すればよい簡易計算 |
✅ インボイスを発行しながら負担軽減 | インボイス発行事業者として登録しながら、 複雑な仕入税額控除計算を省略できるため、事務負担と納税額のバランスが取れる |
5 注意点:誰でも使えるわけではない!
2割特例は便利ですが、以下の方は対象外となります。
基準期間の課税売上高が 1,000万円を超える方
すでに課税事業者であり、制度とは無関係に登録していた方
つまり、「インボイス制度をきっかけに課税事業者になった人」限定の特例です。
まとめ 免税事業者こそ、早めの確認を!
インボイス制度で免税事業者が影響を受けるケースが増加中
インボイス発行を機に課税事業者になった場合、「2割特例」の活用が可能
申告書への記載だけでOK、事前手続き不要で計算も簡単
対象となるかどうかは、売上高や登録の時期によって異なります